西遊記パロ-5 薄暗い部屋。アレルヤの寝ている寝台に頭を乗せて、ぼんやりとアレルヤの寝顔を眺めているロックオ ン。 ロ「(手、おっきくなったなぁ…)」 するするとアレルヤの手を撫でる。その形のいい指に自分の指を絡ませて、きゅっと握った。 もう片方の手をアレルヤの頬に伸ばす。 ロ「(かっこよく、なっちまったなぁ…。どんな風に喋るんだろうな…。どんな声で喋るんだろうな)」 アレルヤとハレルヤは、自分とライルと同じ一卵性の双子らしいが、自分たちと違ってしゃべり方が正 反対なせいか声も違うように聞こえるという。 ハ『だから俺にアレルヤを重ねようと思っても無駄だぜ。気長にアレルヤの目が覚めるのを待つんだな』 確かに。ハレルヤの話す姿を見ていても、自分が八年前の姿しか知らないとはいえ、ハレルヤからアレ ルヤを想像することは難しかった。強いて言うなら身長差くらいなものだ。アレルヤとハレルヤは同じ 身長らしいから、この八年の間に自分はアレルヤに身長を追い抜かされてしまったらしい。八年前はア レルヤが肩に手を置いて少し背伸びして、自分が身を屈めてちょうどキスができるくらいだったのに。 今度はこの逞しい腕に抱きしめられるのだろうか。 ロ「(そういや、体つきもよくなったな。前は抱きしめたら折れそうなくらい細かった…)」 ロ『ほっせぇ!!アレルヤ、俺に食事なんて少しでいいからお前もっと食え!!』 ア『え!?あ!大丈夫ですよ!!それに規定以上の量の食事を摂ったら怒られます!!』 初めの頃、よくなんとかしてアレルヤに食事を摂らせようと躍起になったこともあった。それが今では、 それなりに鍛えてきた自分の体よりもいい体つきになっている。無駄のない筋肉。体脂肪率十パーセン ト以下なのは見て確実だ。 ハレルヤから、この八年間のアレルヤの様子を詳しく聞いた。 あの要塞では人体実験が行われていて、そのことには当時の俺もちょっとは感づいていたりした。けれ ど、アレルヤの身体が普通の子どもより華奢なところ以外、別におかしなところはなかったし。素通り した要塞の内部も綺麗な鉱石が壁や天井のあちこちに埋め込まれていること以外は、まぁ確かに殺風景 ではあったが、別段奇妙な研究装置も見あたらなかった。 ロ「(ピアス‥‥。これのおかげで外に出られるって、言ってたっけ…)」 アレルヤの身体の右側から寝台に顔を乗せていたロックオンは、少し頭を上げてアレルヤの左耳を見た。 そこにはカタギリが精製したという、ハレルヤやソーマと同じ鉱石のピアスが光っていた。青色にピカ ピカ光る粒が混じった石。邪悪な気を祓うと言われているラピス・ラズリの石によく似ている。しかし それよりも高価で希少価値の高い鉱石だった。 ロ「(俺が要塞を通っても何も起こらなかったのはアレルヤの“気”のおかげじゃなくて、俺が鉱石を 盗んだりしなかったからで…)」 アレルヤの仲間が死ななかったのは嬉しいことだけれども、それはアレルヤとの行為が無駄なことだっ たと思わせるようで、少し虚しい。 ハレルヤが言っていた。 ハ『俺、初めてアレルヤのわがまま聞いたかもしんねぇ』 ロ『?』 ハ『カタギリがピアス作って、アレルヤたちも要塞から出られるようになって。本当は仲間たちと、ソ ーマの寺院を目指す予定だったんだ。グラハムたちが研究者たちをぶっ殺したら、俺たちは誰も養 ってはくれないからな。だけどアレルヤの奴は、おめぇに会いたいって言い出した』 ロ『おれ、に…?』 ハ『そうだよ。八年前にほんの少し会っていただけのお前に』 ロ『なんで…』 ハ『は?馬鹿かおめぇは。気づいてると思ってたけどな』 ロ『‥‥‥‥‥?』 ハ『頭がよくまわると思いきや、案外単純一途な馬鹿だよな、俺の兄貴は』 ロ『どういう意味だ…?』 ハ『八年間、もう一度会えるかもわからない相手を忘れず焦がれて、会えたら会えたで自分が死にそう になるまで力を使う。とんだ馬鹿もんだよ、コイツは』 ハレルヤがアレルヤの額をコツンと弾く。 ハ『アレルヤは、間違いなくおめぇが好きだよ、ロックオン』 ロ『っ…!!』 ハ『そんなに驚くことか?まぁ、そりゃそうだよな。もう八年前に会ったきりだもんな』 ハレルヤは立ち上がり、寝台から離れていく。 ハ『コイツが目覚めるまでに、体よく断る返事を用意しとくんだな。おめぇの見目ならわざわざ男のア レルヤを選ぶよりも、いい女が他にいるだろ?』 ロ『俺は…っ!!』 ハ『頭冷やしとけよ。同情なんかで返事すんじゃねぇ。俺たちは妖魔扱いされる改造人間だが、ちゃん と生きてる。同情は‥‥頭にくるだけだぜ』 ロ『‥‥‥わかった。でも俺は、お前たちを哀れんで接したことはないし、するつもりもない』 ハ『覚えとくぜ』 冷静だ。俺は十分に冷静だ。 だけど、止まらないんだ。 眠っているアレルヤの横顔を見ているだけなのに、心臓がドキドキうるさくて、肌に触れればそこから 沸騰したように体中が熱くなる。 これってつまり、俺は、アレルヤを‥‥。 ロ「(もうすぐ一週間。まだ起きないのかな…)」 アレルヤの目が覚めるのは早くて一週間と言われた。しかしその可能性は極端に低く、普通なら十日は このままだろうとソーマは言っていた。 気功は少しの量なら大気の力を吸収して発動できる。しかし防護壁を張ったり、熱衝撃波を撃ったり、 傷を治癒させるといったものは大気の力だけでなく術者の体力も削るものらしい。そして更に過度な術 の行使には生命の危険も関わるようになり、最悪は衰弱死するという。 アレルヤはまさにその寸前の状態だったそうだ。 幸いアレルヤは術者にしては珍しく、体力面でのトレーニングも怠っていなかったので普通の術者より も疲労に耐えうる体だったようだ。それでもこうして目覚めないのだから、やはりそれなりに危険な状 態なのだろう。 ロ「(体力が回復しないから…?体の中の“気”の量が足らないから…?)」 休息が必要なのだとしたら自分にできることはない。しかし“気”を補うことで回復が早まるのならば…。 ロ「(こうすれば、俺でもアレルヤを助けられる…かな‥‥)」 ロックオンは体を乗り出し、アレルヤの頭の脇に手をついた。 人差し指でアレルヤの唇をなぞった。カァッと躯が熱くなるのを感じる。 ロ「アレルヤ‥‥」 ロックオンはそう呟いて、アレルヤの唇に自分のを重ね合わせた。 耳の奥で鼓動が鳴っている。八年前と同じだ。 ロ「ん‥‥アレルヤ…、アレルヤ…――」 ちゅっ、ちゅっと啄むように何度も触れるだけのキスを繰り返す。唇を重ねるたびに自分の中の熱い気 持ちがアレルヤに伝わるようにと念じる。きっとこれが自分の“気”なんだ、と。たとえ自分にあるす べての“気”を渡してしまっても、普通の人間は“気”の力に頼って生活しているわけではないから倦 怠感が残るだけで命に別状はないはずだと言っていた。 舌を絡めたい。もっと深い口づけをしたい。 ロ「(まずい…止められない‥‥っ)」 キスをしながら自分の躯の芯まで熱を帯びるのを感じ、一度体を起こした。 朦朧としかけた意識から、ぼんやりとアレルヤを見下ろす。 ゆらゆら揺れる灯りに、僅かに湿ったアレルヤの唇が映る。ごくりと喉が鳴った。 ロ「アレルヤ‥‥―――」 もう一度唇を重ねる。それ以上深くできないことはわかっていたのに、強請るように薄く唇を開いたり した。 ロ「(あぁ、もう…なにやってんだ、俺。四歳も年下の、それも寝てる男相手に…!!)」 薄く目を開く。その時、 「ん…ん…」 重ね合わせた唇の中でアレルヤの声が響いた。驚いてキスを止める前に目の前でライトグレイの瞳が瞼 の下から現れた。 ロ「アレル…っん…」 離れようとしたら軽く頭を押さえられて、深く舌を絡められた。 頭の中がぼぅっとする。すごく気持ちいい。 自分の熱をアレルヤに渡すように念じながら、はしたなく、もっともっとと強請った。 ア「――…ロックオン‥‥。久しぶりなのに、随分と積極的ですね‥‥」 ロ「だって、お前がすごくかっこよくなってるから…なんだか、止まらなくて‥‥」 キスを止めて、少し唇を離したところでアレルヤが言った。まだなんとなく声が寝ぼけてる感じがする。 たぶんまだちゃんと覚醒はしてないだろうな。八年前のアレルヤならこんな台詞、起きてすぐ言ったり なんかしない。きっと顔を真っ赤にして驚く筈だ。だとしたら夢だとでも思ってるのか? 実際、顔を赤くしてるのは、アレルヤじゃなく俺だったりする。 ロ「、そうだ。お前、なんで俺が“俺”だってわかったんだ?ライルかもしれないだろ?」 ア「わかりますよ、当たり前じゃないですか。僕とハレルヤだって双子だし、それに‥‥‥八年も片想 いをしていた人のことを間違えるはずもない」 ロ「…っ!!」 穏やかに微笑まれ、俺の頭の中はドキドキの最高潮。 ロ「そ、あ、の…アレルヤ、体の具合は…?」 駄目だ。完璧に思考が停止してる。簡単な問いですらすんなりと口から出てこない。 そのことに気づいていないアレルヤは「うーん…」と俺の知っているアレルヤの声より数段低い声で唸 った。 ア「起きあがるのは、無理そうです…。腕に上手く力が入らない…。少し目眩もするかも」 ロ「そう、か…」 アレルヤの上から体をどかし、寝台の脇に寄りかかりながらそわそわと落ち着かない。アレルヤが冷静 だから余計にだ。 アレルヤの太く逞しい腕がゆっくりと動いて彼の表情を隠す。横になっているのに目眩がすると言って いた。辛いのだろうか。 ロ「水、飲むか…?」 ア「あ、はい…すいません」 俺は自分の枕元に置いていた器を持ってくる。どうやって飲ませようか迷って、アレルヤに尋ねた。 ロ「なぁ、アレルヤ。口移しでいい?」 ア「え?」 ロ「それでさ、俺からアレルヤに“気”って渡せるか?」 アレルヤは額の上から腕をどかし、俺を見ている。 ア「あ、はい…たぶん、できます…けど。そっか…さっきの、ロックオンの“気”だったんですね…」 ロ「俺がアレルヤに早く元気になってほしくて送ってた“気”、ちゃんと送れてたのか?」 ア「はい…。さっき、体の中が熱くなって…。てっきり、貴方とキスできたからかと…」 よかった。ちゃんと届いていたんだ。 だったら、もう俺の体が動かなくなってもいい。全部アレルヤに渡してやる。 俺は“気”の力がなくも生きていける。今度は俺がアレルヤを助ける番。 俺は口に水を含み、アレルヤの頭を僅かに持ち上げると再びアレルヤに口づけした。 唇を離すと、アレルヤの喉がこくりこくりと上下し、俺は口元から首筋に流れ落ちた水の跡に唇を寄せ た。 ロ「渡せるだけ渡す。アレルヤ、八年前と今回、助けてくれたお礼を返させてくれ」 ア「でも、ロックオン‥‥」 房中術。八年前にしたあの行為は、れっきとした術とはいえ淫らな行為であることは変わらなくて。 お互いにまだ子どもだったから強く意識していなかった部分もあったが、今ではもうすっかり大人にな っている。 だからアレルヤは戸惑いの声を上げた。一方通行の感情に俺を付き合わせまいと。 でもな、アレルヤ、俺…俺もな…―― ロ「好きみたいだから…――」 ア「え‥‥‥」 ロ「俺もアレルヤのこと、好きみたいだから」 鎖骨の辺りにキスマークを残し、もう一度キス。体は半分、アレルヤの上に乗っている状態だ。 ロ「八年前、俺、ちゃんと答え返さなかったよな。ごめん。もう会えないのに、この気持ちを認めるの が辛かったんだ。それでもアレルヤは俺に好きだって言ってくれたのにな…」 ア「ロックオン‥‥」 ロ「好きだよ、アレルヤ。八年前からずっと。忘れた日なんてなかった。もう一度会えて嬉しい。すご く…すごく…!!」 ア「ロックオン…!!」 俺はアレルヤの手を握って、深く深く口づけをした。 何度しても止まらない。キスだけでこんなに体が熱くなるなんて…。 俺はそろそろとアレルヤの躯の上に跨った。服の前をくつろげ、厚い胸板に頬をすり寄せる。 ロ「逞しくなったなぁ…」 ア「少し前までは子どもの姿のままだったんですけどね」 ロ「信じらんねぇな」 元気になったら強く抱きしめてくれるだろうか。その感触を想像しただけで躯は高揚した。 アレルヤの胸の突起に吸い付く。 ア「ん、ぁっ、ロックオ…だめ…っ」 ロ「いいの。俺がすることに集中してろよ。ちゃんと気持ちよくさせてやるからさ…」 ア「で、も…っ」 下衣をどけ、アレルヤの勃ち上がった性器に手を沿わせた。アレルヤから制止の声があがる。 ロ「大丈夫だから。俺に任せろって」 そう言って宥めると、俺は顔を移動させてアレルヤの下腹部で脈打っているそこに舌をまとわりつかせ た。丁寧に根本から先端まで舐めきると、亀頭を口の中へすっぽりと収めてしまう。歯を立てないよう にすると顎が疲れて、それでも八年前と比べものにならないほど立派になったそこを大事に育てる。手 も使って竿を刺激し、舌先で先走りの溢れる鈴口も愛撫した。 さすがに口に収まりきらなくなった頃、俺は唾液を多分に含ませて竿の裏筋やら浮き上がった血管に舌 を這わした。自分の唾液とアレルヤの先走りで頬が濡れたが構いやしない。 どうしよう。一度イかせようか。でもそれじゃ体力だけ無駄に消費させてしまう。 ロ「アレルヤ、少し我慢しろよ」 俺は手早く自分の衣類を脱ぐと、指先にアレルヤの精液を拝借してから己の背面に近い場所にある蕾へ 人差し指と中指を誘った。 ロ「っ、く…ぅ…!」 いきなり二本はきつかったか。けれど、早く解さなければ。アレルヤを待たせていられない。 ア「ロックオン…?」 不安げなアレルヤの声。横になっているアレルヤには俺が何をしているのかよく見えないのだろう。 ロ「だ、じょうぶ…。すぐ、済むから…っ」 繋がらなければ“気”は渡せない。けれどどちら側かに制限はなかったはずだ。 俺は性急に、八年ぶりにアレルヤを受け入れる場所を解していく。 解しながら、アレルヤへの奉公も忘れない。 達しさせない程度に気持ちよくさせてやって、俺は窮屈な体勢で挿れていた指を抜いた。 ロ「っぅん…っ!‥‥アレルヤ、いいか?」 ア「ロックオン…うん…」 俺は腰を上げ、右手でアレルヤの性器を持つ。先端が入り口に当たったのを確認すると、ズッ…と腰を 落とした。 ロ「っぁ、ぁぁ…っん…っっ!!」 ア「っく、きつ…っ」 始めだけ…。最初だけ受け入れてしまえばあとはすんなり挿れられる…。 そう思っていたが、思うように腰が落とせない。亀頭を飲み込んだだけで止まってしまった腰に、体重 を落とそうとするが、無意識に力が働いて自分の意志ではできそうにない。 俺は涙目でアレルヤを見た。 ア「痛い、ですか…?大丈夫。息をゆっくり吐いて…」 アレルヤに言われるままにゆっくりと息を吐く。 ア「挿れますよ」 ロ「え‥‥ぁ、ぁぁぁああ…っっ!!」 息を吐ききった頃を見計らって腰を掴んで引き下ろされた。ずぶずぶと侵入してきた熱に悲鳴を上げて、 咄嗟に両手で口を押さえる。 万が一、今の声を聞きつけて誰かが来たら非常にまずい。 両手の間からヒュゥヒュゥと息をして、悲鳴と共にきつく閉じた瞼を上げた。 ロ「は、は…っ、ん…ぁ、すご、おっきい…。しかも、すげ、あつ…っ、ん…!」 ア「僕も…ロックオンの、なか…すごく、気持ちいいです…」 恥ずかしいこと言ってくれるぜ…。って、俺も言ったけど。 アレルヤは俺の中でドクン、ドクン、と強く脈打っていて、その度に大きくなっていくみたいでたまら ない。 そのデカさに動けるか不安になる一方で、早くも腰が揺れそうになっている。 あぁもう…いつの間に俺ってこんなに淫乱になったんだろう…。 そう思いながら、俺は前後に躯を揺らした。 ロ「アレルヤ…ぁっ、ぁぁっ…あっ、あっ…!」 ア「ん…ロッ、クオン…!!」 だらしなく開いた口から喘ぎ声が漏れる。耐えようとしても限界を超えていた。片手で躯を支え、もう 片方の手で口を押さえたが、それでも限度がある。だが、理性が勝ることはなかった。 俺は前後へ揺れるだけじゃ物足りなくなって、ついに腰を上げては、躯の中のアレルヤの先端が自分に 悦い場所を穿つように深く下ろすようになる。そこへアレルヤの手が伸びて、俺の性器を握り込んだ。 ロ「ひ、っん、やぁっ…ぁ、だめ…やめ…っ!!」 突然の愛撫に一層高い声があがる。自らの先走りがアレルヤの手を濡らし、滑りをよくする。 ギュッと強く敷布を握った時、ちょうど俺が腰を落とした時だったが、アレルヤの腰が動いてより深い 場所を穿った。 ロ「ひぁっ、あぁぁぁぁ…っっっ!!」 ア「んっっ…!!」 その瞬間、背筋を電流が奔ったようになって俺はのけぞるようになりながら達し、アレルヤも収縮する 内壁に強く性を放った。 ただの性行為とは違う怠さが体の力を奪う。かくん、と力を失った腕の代わりに支えてくれたのはアレ ルヤの逞しい腕だった。寝台に起きあがったアレルヤは、俺と繋がった状態のまま向かい合わせに俺を 抱く。 ア「少し、もらいすぎた…?大丈夫?」 そうか。起きあがれるということは、俺の“気”を受け取って少しは回復したってことだよな。 ロ「だいじょうぶ、だ…。お前は…?」 ア「少し元気になったみたい」 ロ「…だろうな。まだデカいぞ…」 ア「うん、だから‥‥」 ロ「‥‥?」 指摘されたことが恥ずかしいのか、口ごもるアレルヤ。 けれど実際に言われたのは、もっとこちらが驚く内容で…。 ア「もう術とかじゃなくて…純粋に貴方を抱きたい」 ロ「アレ、ルヤ…っ」 俺は思わず息を詰まらせた。同時に気怠さなんて吹き飛んだ。 もうホントのホントに俺の力全部やる。だからアレルヤ… ロ「あぁ…アレルヤ…。好きだよ。もっと強く抱いてくれ‥‥!」 ア「ロックオン…愛しています…!!」 ロ「アレルヤ…っ」 アレルヤの首に強く抱きつく。背中にアレルヤの腕がまわされて力強く抱きしめられた。 この感触。幸せすぎて言葉も出ない。 もう二度と離れるもんか…!! 俺は曲げていた膝を伸ばし、アレルヤの背後に足を投げ出すように伸ばした。ズズッと繋がりが更に深 くなる。 声も涙も出なくなるまでアレルヤを感じた。 眠りに落ちる前。同じ布団にくるまれて交わしたキスは、もう別れのキスなどではない。 別れの言葉なんて、もう告げたりしない。 ◇◆◇ 朝になり、いつもなら二度寝を始めるハレルヤが珍しく誰よりも早く食堂に現れた。 ソ「おはようハレルヤ」 ハ「あぁ、おはよ」 ソ「早いな」 ハ「まぁな」 会話もそこそこに食事を盆に盛りつけるハレルヤにソーマは首を傾げた。 ソ「部屋に持って行く気か?」 ハ「アレルヤにな」 ネ「なになに?目が覚めたの!?あ、ごめんねおはようっ!」 アレルヤに朝食を持って行くとわかったら、食堂に集まってきた仲間達がアレルヤの見舞いに行くと言 い出した。 ハ「あー…まだ確実に起きたってわかってるわけじゃねぇからよ。そんなついて来んなよ」 テ「ロックオンを助けてもらった。一言礼を」 セ「心配だ」 ビ「医療に詳しいわけじゃないけど、具合を診なきゃね」 ソ「私も見舞いと、無茶のし過ぎだと注意を」 結局ハレルヤの他にティエリアと刹那、ビリーとソーマがついて来てしまった。 ハレルヤは、取り敢えずソーマだけは部屋の外に居させれば大丈夫だろうと考え、皆の同行を了承する。 昨晩、何があったのかはハレルヤも知らない。けれど、隣の部屋で寝ていた身としては察せない訳がな い。 アレルヤとロックオンが休んでいる部屋の並びに着くと、部屋の前でライルが座り込んで悩んでいた。 そういえばアレルヤとロックオンの部屋を挟んだ隣の部屋にはライルがいたのだった。 ハ「何してんだよ」 ラ「あっハレルヤ、おはよう…」 ハ「おぅ。両手塞がってんだ。邪魔するのが目的じゃなけりゃ扉開けてくれよ」 ラ「え、でも…」 ハ「なるようになる。別に死ぬわけじゃねぇだろ」 ラ「う…だよ、な…」 ハ「ソーマ、念のためちょっと廊下にいろよ?」 ソ「? わかった?」 ライルが扉を開く。案じていた独特のあの匂いはしなかったが、もう一つの懸念は的中し、床に敷かれ た布団にロックオンの姿はない。 人知れずため息をついたハレルヤはスタスタと部屋に入ると、テーブルに盆を置いて部屋の窓を開け放 った。 ハ「アレルヤ、ロックオン、朝だ起きろ!」 ア「、う…ん‥‥ハレルヤ…?」 ロ「朝‥‥?、っハレルヤ!?ぅぁっ、いて、て‥‥」 ガバッと飛び起きたロックオンは、まったくどんな体位でアレルヤを受け入れていたのやら、呻き声を 上げて再び倒れた。 ア「大丈夫ロックオン!?ちょっともうハレルヤ!朝からいきなり驚かさないでくれる!?」 ハ「むしろ驚いてんのはアイツらのほうだろ」 ア「え?」 テ「ふ、不潔だ!万死に値する!!」 セ「‥‥‥‥‥‥‥」 ビ「そんなに凝視しちゃ駄目だよ刹那くん」 ラ「兄さんの破廉恥ぃぃぃぃ!!!!」 ロ「げ‥‥‥」 ア「ドンマイ…」 回れ右をして部屋を出ていくティエリアと、空気を読んで刹那とソーマを連れて退散するビリー。 双子の弟たちだけが部屋に残った。 ハ「汚れたもんはちゃんと始末しろよ。ったく、目覚めてよろしくやったと思いきや、早速ロックオン の足腰立たなくさせやがって」 ア「そ、そのことについては反省してるよ…!」 ロ「あんまアレルヤを責めんなよ、ハレルヤ。元はと言えば俺が誘ったんだから」 ラ「に、兄さん…どうして…兄さんいつの間にそんなアバズレになっちゃったんだよ!」 ロ「俺はアバズレてねぇ!!!!」 ア「ロックオンは僕に“気”を分けてくれたんだよ…!」 ラ「昨日のは絶対にそれだけじゃなかった!」 ア「き、聞いてたんですか…」 ハ「ていうか聞こえてた」 ロ「一生の不覚‥‥」 ラ「アレルヤが兄さんを好きだったのは知ってるさ!!でもなんだってこんな‥‥」 ロ「待て、ライル」 その時、ロックオンの纏う空気が変わった。部屋の中をピシリと張り詰めた沈黙がおりる。 ラ「兄さん…?」 ロ「俺はアレルヤに抱いて欲しくて誘ったんだ。アレルヤが好きだから、アレルヤに元気になって欲し かったからこうしたんだ。それを、俺たちが男同士だからって悪い風に言うな。好きな奴を好きだ って言って悪いのかよ!」 ラ「にい、さん…」 ハ「おーおー、その辺にしとけよ。ライルだっておめぇらを責める気はねぇよ。ただな…」 ロ「なん、だよ…」 ハ「そのキスマークだらけの体はさすがに自重しろ」 ハレルヤは上半身裸の二人を指差し、すげなく言った。顔を赤くして掛布団を引っ張るロックオンに、 アレルヤは苦笑してそれを譲る。肌の色が浅黒いアレルヤの体に残された鬱血痕は、雪花石膏のように 白いロックオンの肌のそれより目立たない。 ハレルヤに投げて渡された服に着替え、多少ふらつきながらアレルヤは寝台から立ち上がる。 ア「みんなに挨拶しなきゃね」 ハ「てか、その前に水浴びして飯食え。おめぇもな」 ロ「わ、わかってるよ!取り敢えず一旦部屋から出て行ってくれ!!」 ラ「兄さん」 ロ「なんだ!?」 ラ「アレルヤ」 ア「え?はい‥‥」 ラ「さっきはごめん。いつまでもお幸せに!」 ロ「ライル‥‥。あぁ、ありがとう」 ア「ありがとうございます…」 ハレルヤは微笑を浮かべ、部屋を出る。ライルもその後に続き、部屋にはアレルヤとロックオンの二人 きりになった。 二人は朝陽の溢れる部屋で互いに笑みを交わし、―――― --------------------------------------------------------------------------------------------- ずいぶん長くなってしまいましたが、この話はひとつにまとめたいなぁと思っていたのでしょうがない。 にしても兄さん淫らn…コホン、アレルヤと結ばれてよかったね! ハレルヤとライルは一晩よく耐えた(笑) 隣の部屋でこれはきついですよね…。ちなみに最後のキスの後、もう一ラウンド始めようとしたアレニ ルに弟ズは武力介入します。兄ズ自嘲www 2009/03/20 |