西遊記パロ-4 旅を続けていた一行はある戦に遭遇する。 崖の上からその様子を眺めていたが、どうやら数騎の騎馬兵と、歩兵と騎馬兵の混合部隊との戦らしい。 混合部隊は圧倒的数で攻めているがなかなか手こずっているようだ。 パ「どうする、ソーマ。俺はいつでも行けるぜ!」 ソ「おかしな戦だ。助太刀するにもどうすればいいものか」 グ「確かに。たった数騎の騎兵にこれだけの兵士を仕向けるとは…」 ア「あっ!」 カ「どうしたんだい?」 ア「大群のほうの旗、僕、知ってます。確か今度の領主に最有力候補の…」 ハ「あのいけ好かないジジイの軍か。確か、あー…、ラグナとかいったか?おいソーマ、お前さえよけ りゃすぐにでも喧嘩ふっかけに行くんだけどよ」 ソ「少数のほうの軍がどういう軍なのかわからなければ…」 パ「あ!騎兵の一人が落とされたぞ!」 カ「本当かい!?まだ怪我はないようだが、あ!危ない!!」 グ「味方が来たか…。ピーリス、どうする?」 ソ「騎兵の方に力を貸したいが…この数相手では…」 その時、ソーマの言葉を遮って、ライルとアレルヤが呟いた。 ラ「っ!?‥‥‥‥‥ニール…っ」 ア「うん‥‥ロックオンだ…」 ハ「なに…?」 ライルとアレルヤの視線は、先ほど馬から落とされた兵士に駆け寄った騎兵の一人に注がれている。 ライルと同じブラウンの髪と、右目に眼帯をしている。 ア・ラ「「っっっ!!!!」」 その彼の死角から矛が迫った。庇われた華奢な印象の兵士は倒れた彼を抱いて叫んでいる。その口は確 かに「ロックオン」と呼んでいる。 ソ「騎兵に助太刀する!!ライル!アレルヤ!彼の元へ一直線に行け!!他のみんなはフォローを!」 斜面を下り、大群へ突っ込んで行くアレルヤとライル。足を止めかけた二人を援護するようにグラハム とパトリックが道を開く。 アレルヤが先行し、そのすぐ後をライルが、そして周りをハレルヤとソーマが、少し後をグラハムとパ トリックが敵を退けていく。カタギリは遠くで他方へ向けて攪乱させるために爆薬を投下した。 一度は倒れて気を失ったロックオンだったが、ティエリアの声に立ち上がり再び銃を取る。しかし動き が鈍くなっているせいか敵の標的になってしまう。 刹那の乗った馬が到着することで形勢が変わると思われたが、逆に馬の周りを囲まれて身動きが取れな くなってしまう。 馬を捨てる刹那。しかし運悪く、その瞬間にロックオンめがけて槍が投げられた。 セ「ロックオン!!」 ロ「っ!?」 どすっ。ロックオンの腹部に深々と突き刺さる槍。倒れるロックオン。 斧を振り下ろす敵兵。そこへクナイが投じられ、黒い影が割り込んできた。 低い声で何かを唱えた影……アレルヤは前方へ手を伸ばす。その隣に駆け込んでくるソーマ。 ハ「ちっこいのとほっそいの!横へ飛べ!!」 ハレルヤの声に咄嗟に飛び退いた刹那とティエリア。その間をアレルヤとソーマの手から放たれた光の 帯が奔流し、敵兵を吹き飛ばしながら百メートル先まで地面を抉った。 呆然とする刹那とティエリアに襲いかかった敵兵はライルが乱れ撃つ。 ラ「ハレルヤ、あとは頼む…!兄さん!!」 ソ「気功で傷を塞ぐ。ライルはそのまま彼を支えていろ」 ア「ソーマ、僕がやる。これ、預けるから」 アレルヤはソーマにチャクラムを預け、場所を代わる。刹那とティエリアは突然現れた人物が味方なの か戸惑ったが、今はそんな状況ではないことと、ロックオンとそっくりの男が彼を「兄さん!」と呼ん でいることから容認を許した。 やがてカタギリの火薬とソーマの気功で敵の数を減らすことができ、半数にまで数を減らした敵は敗走 していった。 ヨ「! ロックオン!!」 ネ「ヤダ!やられちゃったの!?」 ミ「誰だテメェら!!」 ハ「あァ?いきなりその口の利き方はなってねぇんじゃねェのか!?」 ソ「やめろハレルヤ」 セ「彼らは…助けてくれた…」 テ「俺を庇って、ロックオンが…っ!!」 ラ「兄さん…っ!!」 グ「ライル!お兄さんは…っ!?」 カ「くっ、これはひどい血の量だ…!!」 パ「アレルヤ!治せそうか!?」 ア「‥‥‥‥‥‥‥」 パ「アレル…っ」 ハ「黙れコーラサワー。集中が切れる」 ソ「‥‥‥腹部の傷は塞がっている。他の切り傷も大丈夫だ。アレルヤ、もういいぞ」 ア「‥‥‥‥‥‥‥」 ソ「アレルヤ?」 ア「まだ、だめ‥‥。ライル…、ちゃんと、ロックオンの傷、治すから、ね…」 淡い光がロックオンの体を包む。ソーマはハッとしてアレルヤの術を止めさせようとした。しかしその 前にアレルヤはフッと手を下ろす。その指先がロックオンの前髪を撫で、眼帯を落とした。 テ「! 傷が…!!」 ア「きれい‥‥」 擦り傷も打撲の痕も綺麗に治癒し、透けるような雪花石膏の肌に指を滑らせるアレルヤ。 ふんわりと微笑み、アレルヤは刹那とティエリアを見上げた。 ア「もう、大丈夫…。全部、治した、から‥‥」 セ「礼を言う‥‥」 ア「クス‥‥どういたし、まし…て‥‥」 ハ「アレルヤ!!」 後ろ向きに倒れたアレルヤをハレルヤが抱き留める。その額に手をやり、舌打ちをする。 ハ「馬鹿野郎が!力の使いすぎだ!!」 ソ「なんて無茶を…!!」 カ「君たち、もし僕らに恩を感じたりしてくれるなら、せめて彼だけでもどこか休める場所へ連れて 行ってくれないかな?」 ヨ「もちろんだ。ネーナ、馬を下りて歩きなさい。私が彼を運ぶ。ミハエルはロックオンを」 ネ「大丈夫?その人」 ソ「暫く休めば、おそらく。だが、こんなところにいては衰弱死してしまう」 セ「そんなに大変なのか?」 グ「歩きながら話すよ少年。君たちは怪我人…病人を早く陣地へ」 ヨ「了解した」 ミ「悪いなネーナ。先に行くぜ」 翌日の深夜。ロックオンが目を覚ます。 セ・テ「「ロックオン!!」」 ネ「よかった!気が付いた!!」 ヨ「言っただろう?目を覚まさないのは単に貧血だからだと…」 ミ「気分はどうだ、ロックオン」 ロ「お前ら‥‥。あれ?俺、死んだんじゃ…。それに右目が…」 セ「助太刀してくれた人たちがいるんだ」 テ「敵の策略かもしれないと別室に閉じこめているが、貴方が目を覚ましたなら大丈夫だろう」 ネ「アタシ、連れてくるね!!」 ネーナが一旦部屋を出て行ったあと、しばらくして再び部屋の扉が開いた。 ラ「ニール!!兄さん!!」 ロ「っ、ライル!?そんな、嘘だろ!?」 ラ「会いたかった、兄さん!!」 ガシッと抱きつくライル。遅れてネーナ、グラハム、カタギリ、パトリック、ソーマが部屋に入ってく る。 グ「感動の対面だな」 カ「泣けるねぇ」 パ「よがっだなぁライル〜!!」 カ・グ「「‥‥‥‥‥‥‥」」 ヨ「本当に君たちは兄弟なのか?」 ロ「あ、あぁ…。十年前に俺の家族は盗賊に襲われて…。その時、俺と弟を除いて全員死んだ。弟は瀕 死の重傷で…」 ラ「兄さんは旅の僧侶に俺の治療を頼んだ。それで自分は身代わりに、僧侶との契約に従って西の国へ 旅立ってしまった。俺はすぐに兄さんを追いかけようとした。けど、俺が一人で旅に出られるよう になるまで体力が回復するには時間がかかっちまった。だから、こんな、遅く…」 ロ「西ってだけで、お前、よく俺がこの国いるってわかったな…」 ラ「聞いたんだよ。決まってるじゃないか」 ロ「聞いたって…。俺はここに来るまでに、誰かに自分のことを話した覚えは‥‥まさか…!!」 ラ「あぁ…。あの要塞を越えてきた。アレルヤに、兄さんのこと、聞いたんだ」 ロ「!!? アイツは、アレルヤは元気だったか!?」 ラ「元気だったよ」 ロ「そうか…!!ん?ちょっと待て。お前、あの要塞を越えてきたって…」 ラ「? あぁ!そっか!!大丈夫だよ。何もしてない。俺の心配したの?それとも、アレルヤの心配?」 ロ「ば…っ!!」 ラ「‥‥でもホント…。アレルヤの心配、してやってくれよ」 ロ「どういうことだ…?」 ハ「おめぇを助けるために、今度はアレルヤの奴がぶっ倒れたんだよ」 ロ「誰だ!?」 ラ「ハレルヤ。アレルヤの弟だ」 ロ「弟…?そういや弟がいるって言って…。でも‥‥」 ハ「俺たちに呪いなんざかかっちゃいなかったんだよ。ある鉱石の力さえあれば要塞から出ることも出 来たんだ。要塞から出られりゃ体も成長する」 ロ「呪いが、かかってなかった…?」 ラ「そのへんの詳しい話はあとでする。今は…」 ロ「そうだ!!アレルヤが俺を助けるために、って。アレルヤはここに来てるのか!?」 ソ「隣の部屋で寝ている。まだ目を覚まさない」 ロ「っ…!!」 セ「ロックオン!!」 寝台から降りて部屋を飛び出すロックオン。隣の部屋に急ぐ。 勢いよく飛び込んだ部屋は薄暗く、寝台脇の灯りがゆらゆらと風圧に揺れた。 ロックオンはゆっくりと寝台に近寄る。横たわっていたのは、十年前の面影を残しつつも、けれどすっ かり大人に成長したアレルヤ。 その姿を目にした時、ロックオンの胸で鼓動が跳ねる。 ロ「アレルヤ‥‥」 その時、くらりと目眩がして後を追ってきたライルが抱き留めた。 ラ「気分、まだ悪いだろ?」 ハ「アレルヤの気功で傷は治せても、失血の量まではカバーできなかったんだ。まだ当分貧血は続くだ ろうから大人しく寝てろ」 ロ「なら、ここで寝る…」 ラ「兄さん…。まったく、いつからそんなにわがままになったんだニール。ハレルヤ、悪いけど布団を 持ってきてくれないか?」 ハ「俺だけじゃなくて他の奴にも言えよ」 ラ「はいはい」 布団を部屋に運び込んで、ロックオンはアレルヤと同じ部屋で休む。 そしてライルとハレルヤから、ロックオンがあの要塞を出発してからライルが訪れ、自分を見つけるま で何が起きていたか、詳しい話を聞いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 正式にみんなの使用武器について考えてないので困っているんですが、ヨハンだけは決まってます。弓 です。なぜかヨハン兄だけ(笑) もう少し話が進んだら、各軍の勢力関係とか、どんな性質の軍なのかとかの説明も上げますね。 次回はR指定入りますので引っかかる方はご注意ください。 2009/02/28 |