情事の暗闇 前編




葛が桜井機関を裏切り、高千穂勲の元で働くようになってから1ヶ月。桜井自身が高千穂側の人間だった
ことを知り、複雑な胸中を見透かされながらも、超能力者であり軍人としても優秀な能力を持つ葛は高千
穂の元で重宝されていた。

そんなある日、市街地での情報収集の任を言い渡される。スパイ学校で習った外国語が生かされる仕事だ。
早朝にアジトを出発し、単独で市街地へ向かう。



そこで、出会ってしまった。「よもやこんな所で」とも思ったし、「やはり」とも思った。

葛は自分の手首を掴んだ男――葵をゆっくりと振り返った。

 ◇

「よぉ。久しぶりだな、葛」
「あぁ、……久しぶりだな」

中国人が行き交う通りの真ん中で、日本語のやり取りをする二人はぎこちない言葉を交わしながらも、周
囲から注意を向けられることもない。

「元気そうじゃないか」
「そういうお前は……」

――随分具合が悪そうだ。
葛から見て葵は、1ヶ月前よりも少し表情が引き締まり、自分を見つめる瞳がぎらついていた。少し痩せ
たのかもしれない。

「仕事の上司も相棒も、てんで連絡がつかなくなっちまったんでね。異国の地で食っていくのがやっとで
 すよ」

いつもの軽口のつもりだろうが、以前と違って葵の表情には笑みがなかった。
「すまない」とも「そうか」とも言えず沈黙していると、ふいに葵は葛の手を強く引いた。

「話がしたい。近くに宿を取っているから、来てくれ」

葛は一瞬迷い、「わかった」と答える。敵対している今の立場を考えれば拒むべきだったが、“伊波葛”
としての自分は、葵と別れらしい別れの言葉を言えていなかったことが心残りだったので葵の誘いを承諾
した。
葵は葛の手首を掴んだまま、人の流れを掻き分けるように進んでいく。案内するというには幾分強い力に
葛は恐怖のようなものを覚えたが、すぐに考え直す。いざとなれば、葵程度、拘束を逃れて気絶させるこ
とも可能だと、自分の動揺を鎮めた。

  ◇

「こっち。二階だ」

葵に連れて来られたのは見るからに安そうな宿。雪菜たちが一緒に宿泊している様子のないことから、出
費を抑えようとして葵ひとりで宿泊しているのだと察する。
軋む階段を上っていく。その頃には葵の手は手首から離れていた。

「ここだ。入れよ」
「あぁ……」

葵に促され、葛は少し警戒しながら部屋の扉をくぐった。
宿の部屋は殺風景な所で、寝台とテーブル以外、装飾品の類いは何もない。一つだけある窓の外は表通り
に面しているらしく、さっき外で見た向かいの店の看板が見える。
バタン、と背後で扉が閉まった。無表情の葵が扉の鍵を掛け、葛の横を通り過ぎて窓も閉める。カーテン
を引いたので、部屋の中が薄暗くなった。
当然、逃げ道を塞がれたことに葛は気がついた。けれど、余程のことがない限りは葵から逃げきれる自信
はあったし、ましてや葵に殺される心配もなかった。
だから葛は葵に勧められるまま、寝台に腰掛けたのだった。

「悪いな、お茶も出せなくて」
「気にするな。そんなもの、期待していない」
「そっか……」

そう言って葵は葛の隣に腰掛ける。
久しぶりに二人きりになる。そう意識した途端、葛はもう一度、葵に触れたいと思った。
葛が高千穂勲に組みする前、葵と葛は恋仲にあった。葵に告白されるまで、葛は己の中にある感情には無
自覚だったが、いざ言葉にされると自分でもどうしようもないくらい葵に惚れ込んでいた。
そんな二人が1ヶ月ぶりに再会した。初めは意識していなかった“二人きり”という状況に、葛は早々に
話を切り出して、この部屋を立ち去るべきだと判断する。このままこうしていたら決心が鈍る気がした。

「葵。気づいているだろうが、桜井さんは大尉――高千穂側の人間だ。俺たちは桜井さんにいいように集
 められた駒だった」
「――あぁ、知ってる」

感情を押し殺した、というより感情を感じさせない声で葵は答える。葛は違和感を感じながらも言葉を続
けた。

「初めは俺も戸惑った。だが、俺は高千穂大尉の考える未来に共感した。少なくとも、俺がこうありたい
 と思っていた場所が高千穂大尉の側にはある」
「…………」

葵は今度は何も言わない。葛は構わず続けた。

「お前たちを嫌いになって、裏切った訳じゃない。ただ、俺の居場所は大尉の所にあると思ったんだ」

「わかってくれ」と葛は言った。
葵はため息をつきながら「あぁ」と答える。その声に葛はほっと安堵した。
ありがとう、と言おうとして、葛はふいに掴まれた自分の腕を見る。
葵?と尋ねる間もなく、葛は寝台に押し倒され、肩を押さえつけられた。そして言葉を封じるように荒く
口づけされる。

「んんっ、んぅ……!?」

痩せてしまっているように見えたのに、葵の体は押し返してもビクともしない。体重をかけられてしまっ
ているのが不利に働いているのだろう。
抵抗らしい抵抗もできないまま、葵に舌を絡め取られ、濃密なキスを繰り返す。嫌悪はないが、言い知れ
ない不安を感じたのは確かだ。
肩を押さえられた方の手で葵の腕に触れる。気づいたように指を繋ぎ合わせてくる葵。
その指の形はよく知っているものの筈なのに、荒い口づけはまるで知らない。

「はぁっ、はぁっ……」
「葛……――」

ようやく解放された口で必死に酸素を取り込もうとする。苦しげに喘ぐ葛を見つめながら、葵はするする
と葛の服を脱がせていく。

「あ、お……っ!?」

葛がハッとした時には、ネクタイとベルトは外され、両腕は寝台に拘束されようとしていた。

「くっ、葵!!」
「暴れんな。怪我するぞ」

葵に制され、葛は反射的に動きを止めていた。怪我を恐れたのではない。低く抑えた葵の声音に反応して
いた。

「――いい子だ」

額にチュッとキスをする葵を、信じられないような目で見上げる。
口元の笑みは知っているものと同じ筈なのに、なんなのだろう、この不安は。
葵は葛の動揺を汲むことはせず、ワイシャツのボタンを外して白い肌に唇を寄せた。

「ん、ふぅっ……!」

初めて肌を重ねる訳ではない。
葵は迷うことなく、葛が敏感に反応する場所へ次々と赤い徴を残していった。ネクタイとベルトで寝台に
拘束された葛は抵抗を許されず、ただ顔を背けて自らの身体にもたらされる快感に耐える。

「気持ちいいか?」
「んっ、んん……」

声を耐え、鼻にかかった喘ぎだけで答えた葛に、葵は小さく笑った。そして葛のズボンに手をやると固く
なった股間を擦り上げる。

「ふ、あっ!……あ、葵」
「大丈夫。力抜けよ」

口は葛の耳元で囁くように舌で愛撫し、右手は熱を持って固くなったものをゆるゆると擦る。

「お前、魅力的だからな。高千穂のとこで襲われたりしてないか心配だったけど、この様子じゃ大丈夫
 だったみたいだな」

――もうこんなになってる。
葵の言葉に葛は羞恥を感じて顔を赤くした。1ヶ月以上、こういったことから遠ざかっていたので、いや
らしく葵の愛撫に反応してしまう。自分の体がどうなっているかぐらいわかっている。巧みに急かされ、
射精を耐えるのがやっとの状態だ。

「いいぜ、出せよ。まだならもっと気持ちよくしてやる」

そう言うと、葵は指の動きを止めることなく、熟れたようになっている葛の胸の飾りを舌で転がすように
弄んだ。

「んっ、ふっ……、あおい……っ」

泣きそうな声で葛が訴えたが、葵は口に含んでいたものに僅かに歯を立て刺激を与え、股間を擦り上げる
速さを変え、葛は理性で耐えることができなくなり……。

「ぅ、あッ……ぁ……」

ビクン、と葛の体が硬直し、葵の手の平に白濁としたものをぶちまけた。
睫毛を震わせ、葛が快楽にうち震える様を斜に見上げた後、葵は満足げに微笑む。

「葛……」

優しく呼びかけて、快感に耐えきれず溢れた涙を掬うように口づけた。
労るようなそれに愛しさを覚え、うっすらと葛は目蓋を開く。額を合わせるような近さで葵が微笑んでい
た。
名前と呼ぼうとしたが、相手に先を越される。

「好きだよ、葛」

俺もだ、と答えようとするが、唇をキスで封じられた。それだけでなく、いきなり足を高く抱え上げられ、
困惑しているうちに、精液で濡れたままの指が露になった場所から侵入してくる。

――葵!?

葛は深緑の瞳を見開き、葵を見つめ返した。彼は笑みを湛えたまま、さっきと同じ言葉を口にする。

「好きだ、葛。気持ちよくしてやるよ。な?」

囁くような甘い声に反して、葵の指を飲み込んだ場所からは粘着質な音が続く。かなり早いペースで二本
の指をくわえさせられ、三本目が挿入されようとしている。

「葵……っ?葵、ちょっと待て……っ」
「大丈夫。気持ちよくしてやるから、大人しくしてろよ」

何度か制止の声を上げるが、その度に「大丈夫」「気持ちよくしてやる」と言って、葵は意に介する様子
がない。葛を気遣っているようで、まったく気にしていない。葵の独断的な行為に葛は俄に恐怖心が芽生
えてきていた。

「もういいかな……。ちょっと待ってろよ」

そう言うと葵は葛に覆い被さっていた体を退かせ、ギシッと軋ませる音を残して寝台を降りる。

「葵……?」

葛は両腕を拘束され、自由のきかない体でなんとか葵の姿を目で追う。
葵はテーブルに近づき、その上に置かれていた茶色い紙袋を手に取った。中から小瓶と棒のような物体を
取り出す。
小瓶には“エチルアルコール”――消毒液の名が書かれていた。取り敢えず正体不明の薬品ではないこと
に葛は安堵するが、葵が小瓶の中身を奇妙な形の物体に振りかけ、脱脂綿で拭き取った後、こちらを振り
向いた姿に再び不安が胸中に蘇る。

「お待たせ。さ、続き、始めるぞ」

葵の表情は笑っている。だが、退路の絶たれた密室、拘束された両腕、得体の知れない物体。かつてない
異様な状況に葛の恐怖心は増していった。

「葵……――?」

震える声で呼びかける葛。それに答える葵の笑顔はいつもと変わらない筈なのに、まったく別人のように
思えた。
葵は笑みを浮かべたまま寝台に近づき、再び葛の体に触れた。そして奇妙な物体を、解され、精液でぬめ
ついた蕾に押し当てる。

「力抜けよ、葛。大丈夫、怖いもんじゃねぇよ」

不安な気持ちで葵を見上げながら言葉に従うと、固くて冷たい圧迫感が体内に侵入してくるのがわかった。

「うっ……、葵……?」

ゆっくりと体内を侵されていく感覚。いつもなら熱く脈打つものである筈のそれが、なんの熱も感じられ
ないので、何をされるのかという恐怖ばかりが増していく。
しかし葵はそんな不安をよそに、ご機嫌な笑みを浮かべるだけだ。

「昨日手に入れたばかりなんだ。きっと葛も気に入ると思う。使い方教わる時に見てたけど、すげー気持
 ち良さそうだったから」
「な、に……。なんの、話だ……?」
「すぐにわかるよ」

葵はニコッと笑って、慣らすように体の外に出ていた物体の柄を掴み、ゆっくりと抜き差しを繰り返す。

「ぅんっ!?ゃ、ぁっ……!!」

内蔵が引っ張られる感覚に目を瞑る。この感覚が快感に変わるのはそう時間は掛からない。
けれど、葵の言う“気持ち良さ”というのはこれではないと直感していた。そしてその予想は的中する。

「だいぶ慣れたか?じゃ、スイッチ入れるぞ」

カチリ、と小さな音がした次の瞬間だった。体の中に挿入されていた物体が振動し始めたのである。
感じたことのない刺激に、葛は体を硬直させ、激しく声を上げた。

「あぁァっ!?はっ、ぁあッ!!ぁっ、葵ッ……!?」
「気持ちいいか?なぁ、葛?」

尋ねる葵に、葛は何も答えることができない。――正確には、答える余裕などない。
いったいこの機械はなんなのか。思考がまともに働かなくなった葛は純粋にその答えを求めた。
葵はそれを察したのか、機械を操作しながら、まるでおとぎ話でも聞かせるように穏やかな声で言った。

「これはセックスを楽しくするための道具。振動の強さは調節できないけど、これなら俺の体力が続かな
 くても、葛の身体を満足させられるんじゃないかと思ってね」

なんだそれは。と微かに残った理性が葵の説明に愕然とする。
葛は息をするのも苦しいほどに、体内に挿入された機械に翻弄され、身を捩りながら葵に訴えた。

「出、せ……!外せ……ッ!こんなの、嫌、だ……ッ!!」
「そうか?それにしては、すげー反応いいけど?」
「ふあッ!?ぁっ、やめ……!!」

葵に、再び痛いくらいに勃ち上がったものを指でなぞられ、無意識に腰が浮く。先程の名残と、新たに先
走ったものを指に絡めながらやんわりと手の平に包み込まれ、絶頂はすぐそこまで迫ってくる。

「葵っ!葵……っ!!いやだ……。やめろッ!!」

はぁはぁ、と甘い声を滲ませ、喘ぎながら叫ぶが、葵が耳を貸す様子はない。むしろ「我慢するな」と
言って射精を促す有り様だ。
体内の物体は葵の操作によって先程から何度か、より感じる場所へ届きかけている。葵はそこへ狙ってい
るようだが、自身のものと機械では勝手が違うのは当然だろう。
しかし、葛はもう限界だ。拘束するネクタイとベルトを握りしめて、切々の呼吸の合間に再度訴える。

「葵っ、やめてくれ!――んんっ、こんなっ……ぁっ……、お前を、直接、感じられないやり方……
 ぁぁっんっ……、いや、だっ!!」
「葛……?」

無意識に腰が揺れてしまうが、こんな拷問のようなセックスは犯されているのと同じだ。止めてほしくて、
葛は必死に叫んだ。

「葵ぃっ……、お前が、欲しいっ……!!」
「っ!」

葵の手が止まる。しかし時既に遅し。

「ぁっ、あああぁぁっ、んぁっァァッ……!!」

無意識に揺れていた腰は葵の手が止まったことによって、より感じる場所へ機械の先端を導き、その結果
二度目の絶頂を迎えた。
びくんびくんと震えた体はやがて力を失って、寝台へ深く沈み込む。体の中から振動を停止した機械が抜
き取られ、その感覚にも小さく震えた。
葵は機械をアルコールで湿らせた脱脂綿で包むと後は放置して、抱きしめるように葛の体に覆い被さった。

「なんだ。そういうことなら早く言えよ。俺が疲れたら、葛のこと気持ちよくさせてやれないからさ、
 我慢してたんだぜ」

荒い呼吸を繰り返すだけの葛は答える体力がまだ回復していないようだ。意識も軽く飛んでいるのだろう。
葵は葛の額にキスを落として、両腕の拘束を一旦解く。それから葛の体をうつ伏せに直して、再び寝台へ
と腕を繋いだ。
葵はそれまで着たままだった自分の衣服を脱いで、葛の背に重なる。
別れた時よりも引き締まった体は、明らかにトレーニングによって鍛えられたものだ。今では葛と並んで
も劣らない体つきをしている。

「愛してるぜ、葛。お前が一番好きだ」

ゆっくりと起き上がる葵。葛の腰を抱いて自分の欲望を押しつけた。

「さっきからずっとこんななんだぜ。笑っちまうよな、みっともねぇ」
「う、ぅぅっ……」

散っていた意識が、背中に歯を立てられて鮮明になる。熱く昂ったものが入口をさ迷うように行き来し、
勿体つけて中まで侵入して来ようとはしない。
もどかしくて、葛は熱い息を吐きながら「葵……」と名前を呼んだ。

「あぁ、ごめん。久しぶりの感触を味わってたんだ。いま挿れるよ」

そう言って、腰を抱く手に力を込める。先端が軽く挿入されると、あとは大した力も入れずとも誘われる
ように葛の体の中へ飲み込まれていった。

「ぁ……ぁ……っ」
「ん……、挿れただけでイッちまったか?まだなんもしてねぇのに」

焦らしたからか?と葛の耳を食みながら囁く。喘ぎ声を漏らしながら、葛はふるふると睫毛を震わせた。

「動くぜ。まだまだ終わりにはさせないから」

ずるりと引き抜かれていく熱に、枕に額を押しつけて声を堪える。しかし、再び内側を開かれていく感覚
に堪えきれなかった嬌声が上がった。

「あぁぁッ!!は、ァッ……んっ!」
「いい声……。葛、気持ちいいか?」

喉を反らせ、普段と比べられない高い、可愛らしい喘ぎ声を上げる葛に、葵は何度も背中にキスをした。
小刻みに、葛の中をかき混ぜるように律動を繰り返す葵。葛は拘束された手首の痛みよりも強い快感に、
意識を保つのが精一杯だった。
その様子を見て、葵は何度も嬉しそうに「気持ちいいか?」と聞いてくる。葛にはそんな葵の言葉に恐怖
と不安を抱いていた。
喉がひくつき、声が掠れそうになる。それでも微かに残った理性で、葛は葵の名前を呼び続けた。

「あおいッ……、葵ぃっ……!!」
「なんだよ。イキたいならイけよ。葛が満足するまで、俺はいくらでも付き合うぜ」

違う。そうじゃない。
葛は限られた範囲の中で、精一杯に首を振った。

「あ、おいっ……!!どうしたんだ……!?」
「うん?何が?」

優しく答える葵の声が怖い。愛しくてたまらなかった声が、今はまったく知らない別人の声に聞こえる。
葛は押し寄せる快楽の波に堪えながら、声を振り絞った。

「どうし、た……っ!?こんなっ、やり方……、お前らしく、ないッ!!」
「そんなことないだろ。いつも通りだって」

葛は体を捻り、後ろの葵を振り返った。そこで笑っているのは確かに葵だ。けれど、こんな風に笑う男
だっただろうか。

「ちがっ……ぁぁっん――ぁ、お前はっ、もっと……優し、くて……ぅうっ!!」
「優しくしてるぜ。どこが違うんだ?」

――違う。違う……!!

容赦なく追い立てられ、葛は自分の目から溢れる涙が快楽によるものか恐怖によるものかわからなくなり
ながらも、なんとか理性は保とうとした。
理性をなくし、今もたらされている快楽に従順になってしまったら、心が折れてしまいそうな気がした。

「葵っ……!!やめっ、ろ!嫌だ……嫌だ、ぁっ!!」
「なんだよ、急に清純ぶっちゃって。本当はこんなんじゃ物足りないんじゃないのか?っと」
「っっっ……!?」

ずん、と最奥を突かれ、叫ぶ声も出せずに背中を反らせて悶えた。
目蓋の裏がチカチカする。これ以上、こんな抱かれ方をしたら体が壊れるか頭がおかしくなってしまう。

「や、めて、くれ……っ!も、無理……だっ!!」
「そんなこと言わずに、もっと楽しもうぜ。俺、葛がいいんだ」
「あぁっ……!!」

がくがくと揺さぶられ、まるで獣のようなやり方に、涙が堰を切ったように溢れた。
嫌だ嫌だと叫び続け、葛はついに意識を失う。
最後に聞いた声は、もう葵の声とは思えないねっとりとした声で、「ごちそうさま」と言った。




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本当はこの四題は明るい感じにしたかったんですけど、「情事」は黒くなりました……。
いやぁ、ひどい話です……。

たぶんこの話は葛さんが乙女さんです。後編もね。

それにしても、随分長いことお待たせしました。もったいぶってすみません。
期待にかなっていたらいいんですけど……、たぶん後編でぶち壊しです(笑)

2011/01/12

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