酔っぱらい 床に転がしておくと邪魔 改め 風邪引きそうで心配



風呂から出てくると、リビングのソファーで酒瓶を何本も空けたアリーがぐでんぐでんに酔っ払っ
ていた。

「おおぉ、ナナシぃ。シャンプーのいい匂いがするなぁ…」

ソファーの脇に立ったナナシの髪を撫で、にへらと情けなく笑うアリー。ナナシの頬がひきつる。

「テメェ…誰が片付けると思ってるんだ」
「おまえー♪」

アリーの指がナナシを指差した。拳を握りしめたナナシは小さく息を吐き、そして

「げふっ!!」

力一杯アリーの横っ面を殴った。

「なにすんらよ!」

呂律のまわっていないアリーが立ち上がり、ナナシに詰め寄ろうとするも、ふらついて、ナナシを
押し倒すように倒れた。

「おい、アリー!テメェ重いぞ!どけ!!」
「むーりぃー」

ばこっ。

「がふっ!!」

もう一撃同じ場所にナナシの鉄拳が入る。すると運悪く、普段は打たれ強いアリーがKOされてし
まった。
ナナシは顔をしかめて、しぶしぶアリーの腕を自分の肩にまわし、ガタイのいいアリーの体を引き
ずるように寝室に運ぶ。リビングのソファーは酒瓶に埋もれて使えないのだ。

「アリー、起きろ。ベッドを使わせてやるから自分で布団に入れ!」
「うぅ〜ん‥‥」

アリーは目覚めない。泥酔状態のところを二発も全力で殴ったのだから仕方ないかもしれないが…。

「ア・リ・ィ、起・き・ろ!!」
「ぐぴー…」

ナナシはもう一発アリーを殴りたくなった。
仕方なく、アリーを支えたまま掛布団をめくり、アリーをベッドに腰掛けさせる。それから腕を離
してアリーの両足をベッドに乗せた。その間もアリーはナナシの首に腕をまわしたままだ。ナナシ
は片足をベッドに乗せて、体を屈めながらこれらの作業をする。

「アリー、ほら、腕を離せ。布団を掛けてやるから…っ!?」

ふいに、アリーの腕がグイとナナシの躯を抱き寄せた。

「ばか、っ、ぅん…!!」

手をつく間もなく、ナナシの躯はアリーの腕の中に収まり、ナナシはアリーの胸に頭を埋めるよう
に倒れた。

「ん、んん‥‥ぷはっ。アリー!!」

ナナシはアリーの躯の脇に両手をついて起き上がろうとするも、アリーの両腕がぎゅうぎゅうとナ
ナシを抱きしめて離さない。

「は、なせ、アリーっ!俺はお前の抱き枕じゃないんだぞ!!」

支えが不十分で不安定だったので、ナナシはアリーの片足を跨ぐようにベッドに両足を乗せた。そ
れからもう一度ベッドについた手に力を込めてみるものの、アリーの腕はビクともしない。

「離さないならもう一度殴るぞアリー!!」
「うぅ〜ん…ナナシぃ、好きだぁ」
「テメェ、“好きだ”と言えば俺が怯むとでも…!?」
「うー…ごめんなぁ。お前のせいじゃないんだぞー…」
「っ!!‥‥‥‥」

抱きしめながら、アリーの手はナナシの髪を撫でた。泣いた子どもをあやすように。
風呂上がりで軽く結っていたナナシの黒髪がぱさりと背中に広がった。

「大好きだぁナナシぃ…むにゃむにゃ‥‥」

ナナシは腕の中からアリーの顔を見上げる。アリーの口の端から、ナナシが殴ったせいで切れた血
が垂れていた。

「‥‥阿呆面…」

ナナシは右手を伸ばしてアリーの後頭部にまわし、可能な範囲で躯を起こした。
躊躇いがちに、ナナシは舌を伸ばす。アリーの口の端についた血を一生懸命舐めて落とした。血が
シーツについたら大変だからだ、と自分に言い聞かせる。
それからサイドボードを探り絆創膏を取り出すと、その箇所にそっと絆創膏を貼った。息をついて、
起こしていた躯を再びアリーの胸の上に倒す。
とくん、とくん、というアリーの鼓動に耳を寄せていると、段々と瞼が重くなってきた。

「アリー…」

掛布団を引き寄せようとしたが、手が届かず諦める。代わりに、もっと強く抱くようにアリーの腕
を引き寄せた。

「ばかアリー…」

ぎゅう…。

ナナシの手がアリーの肩を照れくさそうに抱く。


愛する男に抱かれながら眠りに落ちることの幸福と恐怖を感じながら、
ナナシはゆっくりと瞼を閉じた――





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ナナシさん可愛いですナナシさん…v
これは奥スナの設定通りの時系列だと思います。椅子感樽から帰ってきて休暇中のナナシさんを毎
日尋ねているアリー。そんな日の一場面。
はて、これは何がしたくて書いたネタだ…?
あぁ!ナナシさんにぺろりとしてほしかったんだ!!(オイ)

2008/05/06

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