紅いナイフの鞘は誰-2



ロックオンは階段を目指して走る。階段の入り口で待ち構える敵の頭蓋を違えることなく撃ち抜
き、崩れる体の横をすり抜けた。

「ロックオン!オチツケ!オチツケ!」

「わかってるよ!!くそっ!!」

階下から足音。――新手か。
二階分を降りたところで足止めされる。最初に現れた男たちを殺すも、更に足音は続く。
弾が尽きれば終わりだ。別のルートを探すべきだろう。

階段口から飛び出す。もう一つの階段に向かってその階を駆け抜けるが、やはり敵が待ち構えてい
た。しかも運の悪いことに挟み打ちにされる。

「持ってる荷物を捨てて手を上げな」

ロックオンの技量からすれば早撃ちで男たちの命を奪うことは可能だ。だがそれは手にした銃に弾
が残っていればこその話。
残っているには残っている。しかし前と後ろの敵の人数に対しては残弾数が足りなかった。
後ろ腰にもう一丁の銃が差してあるが、きっと手に取る前に撃たれるだろう。

「早くしろ!」

急かされて、手にしていた銃を床に落とす。

「その荷物もだ!」

ロックオンは吹き抜けにいる因縁の男を横目で見、次いで二階と三階の間に張られたネットと、そ
こまで着くのに渡し通路が障害になっていないことを確認した。

「ハロ、無線機と繋がれるな…?」

ロックオンは小声で鞄の中のハロに向かって言う。
ハロは腕をニョキッ、と生やし、取り出したコードで無線機とオレンジ色の体を繋いだ。

「いい子だ。ミス・スメラギに“ちょっとトラブってるけど問題ないから”って伝えといてくれ」

ハロの目が点滅する。了解の意を示しているのだろう。
ロックオンが微笑みを浮かべると、唐突にハロが叫んだ。

「アレルヤ!ハレルヤ!」

「っ…!!」

その声にロックオンは泣きそうな笑顔でハロを見ると、鞄を手すりの向こうへ放り投げた。

「“飯、一緒に食えなくてごめんな”、“好きだよ”って」

「ロックオン!ロックオン!‥‥」

ハロを入れたまま、鞄が遥か階下へ落ちていく。
周りにいた男たちは一斉に銃を構えた。

「お前!何してっ…!!」

パァンッ‥‥!

六つ鳴るはずの銃声が一つに聞こえる。

「遅ぇよ」

ロックオンを挟み打ちにしていた男たちは皆、眉間或いは心臓を撃ち抜かれて絶命していた。
硝煙の匂いがロックオンの躯にまとわりつく。

ぱちぱち、と手を打つ音がビルの中に響いた。

「流石だね、ニール。最後に俺が見た時から銃の腕はまったく落ちてないようだ」

「‥‥どうしてだ…。なんでアンタが此処にいる…!?」

渡し通路にいる男は切れ長の目をさらに細めて笑う。

「そのことについて、ゆっくり話そう。こちらに降りてきてくれるかな?」

ロックオンは銃を握り締め、男のいる階へ降りるため、静かに通路を歩き出した。




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あーぁ、大事な狙撃用ライフルが置きっぱなしに…。
なんて言ってる場合じゃないほどヤバいんですけどね。
ロックオンは某600憶$$の賞金首並みに銃の腕はいいと思ってる(o^-^o)


2008/01/14



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