紅いナイフの鞘は誰-7




ナビに表示された経路を、気持ちだけが急いて先へ進む。

「早く…!もっと速く…!!」

アレルヤは何台もの車を追い抜いてバイクを走らせた。目的のビルが見えてくるとより一層焦燥感
が増す。

「ロックオン‥‥、ロックオン!!」

ギュルルッ

アクセルを踏み込んで、更に加速した。
ビルの正面。入口にそのまま飛び込みたかったが堪え、路地にバイクを停めて倉庫の窓から侵入す
る。
血痕が残っていた。跡を追えば断末魔の形相をした死体が転がっていることだろう。
アレルヤは敢えてそれを確認しようとはせず、敵の姿だけを意識しながらロビーに出る。

「ハロ!」

小声で呼びかけると、落下防止用のネットに引っかかったハロが鞄の中から目を光らせて合図した。

「通信機はもういいよ。降りておいで!」

アレルヤの声にハロは端末を放り出して、ネットの端から転がり落ちる。アレルヤが落下点に駆け
こんで受け止めると、ハロは腕を伸ばしてアレルヤに巻きついた。

「ハロ?」

「ハロ、ヒトリボッチ。アレルヤ!アレルヤ!」

「‥‥寂しかったん、だね」

アレルヤの言葉に頷くように、ハロの目がピコピコと光る。それから伸ばした腕を羽の内側に収納
し、

「ロックオン!ロックオン!ヒトリボッチ!ヒトリボッチ!モット、モット、ヒトリボッチ!」

訴えるようなハロの機械的な音声に、アレルヤはハロを抱きしめて吹き抜けになった階上を見上げ
た。

「わかってるよ…。すぐ助けに行く!」

エレベーターに向かいかけて、ふいに空から落ちてきた声に足を止める。
何を言っているのかわからない。けれどその声はひどく辛そうで‥‥。

「ロック、オン‥‥?」

ずっと前のクリスマスに見せた、震えの止まらない腕で抱きついてきたあの時の声に、よく似てい
た。

「ロックオン!ロックオン!コワイ!コワイ!タスケテ!タスケテ!」

ハロが腕の中で音声を発する。
アレルヤはオレンジ色のAIを見下ろして、初めはぼんやりと、徐々に強く意識した。



――あぁ、そうだ。怖がってる。抱きしめてあげなくちゃ。僕が行って、助けなきゃ‥‥



長い前髪の下から金色の瞳が強い光を放つ。
ロックオン、と唇が呟いた時、はっきりと聞こえたのはまるで悲鳴のような痛々しい声。

「俺に触れるなぁぁぁ‥‥っっ!!」

見上げた先はあまりにも遠い、遥か彼方。

それでも、僕は呼ぶ。

「ロックオォォンっっ!!」

この腕はまだ届かなくても、届くのが声だけでも、貴方を孤独から救いたくて。

「っ、アレルヤぁぁっっ!!」

一番上の通路の端に、大好きな茶色の髪が揺れた。
ぽつ、と雫が落ちてきた。
透明な雫と紅い雫。涙と血。
それぞれ一滴ずつ。
唇を噛んで憤りを抑える。冷静さを欠いたら負けだ。

「アレルヤ!!逃げろぉぉっ!!」

ロックオンが必死の叫びで階下のアレルヤに訴える。

アレルヤの銀の瞳が再びロックオンを見上げる前に鼓膜を叩いたのは‥‥‥



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私ね、アレルヤにバイクとかかっこいいと思うんですよvあのF○のアド○ェントチ○ドレンで
出てくるあんな感じのバイクで(^^)
てゆーか、私の目指す戦闘はあれ。あんなのを表現したいと思ってる私は身の程知らず。

次回はナナニルに戻ります。

2008/01/26

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