誰にも言えない秘密の仕事 後編




仕事は終わりだ。
俺はまずベッドに放り出されたシャツを羽織る。
が、しかし。

「まだ本番は続くぜ?」

カメラマンの男は不敵に笑みを浮かべた。
部屋の扉が開く。そこにはさっき部屋を出て行ったエキストラの姿。彼は何故か別のビデオカメラを持
っていて、カメラマンだった男はもうビデオカメラを構えてはいない。

「ほら、ヤり足りないんだろ…?」

最初にカメラマンをしていた赤髪の男が言う。俺は事態が理解できず呆然としていたが、立ち上がった
兄さんの肩を押して、男は兄さんに馬乗りになった。

「なに、すん…っ!?んんっ、んーっ!んーっ!!」

「兄さんっ!?」

「ちゃんと湿ってんな。これならすぐに挿れられんだろ」

男は兄さんの腕を拘束して足を自分の肩に担ぐと、露になった秘部へカメラによく映るように指を挿し
込んだ。

「やっ、やだっ…、ん、ぁっ、ぁぁっ!」

床に押し倒された兄さんは泣いて抵抗しているがビクともしない。

―――なんだこれ…。こんな話、聞いてない。

クチュクチュと水音が部屋に響く。カメラは、嫌がる兄さんと怖がる俺を交互に映しては、時折、男の
指が解している場所を映していた。

「こんなもんか」

そう言って、男は兄さんに突っ込んでいた指をくぷんと抜く。

「アァッ……!!」

「なんだ、名残惜しかったか?安心しろ、ちゃんとまた後で挿れてやるからよ」

男は床に倒れた兄さんをベッドの端に寝転がせると、今度は俺の手を掴んだ。

「な、なんだよ…!」

「そんなに怯えるなって。まだ気持ちよくなりたいんだろ」

それはAV用の台詞で実際は違う……、と言おうとして言えなかった。男の指が俺の中を犯し始めたか
らだ。

「やァッ…!!ぁっ、アッ…、んんっ…」

途端に呼吸が乱れる。ぐりぐりと内壁をかき回して、奥へ奥へと入ってくる。その圧迫感がすごく気持
ち悪い。だけど男の指が俺のある場所を掠めた瞬間、信じられない快感が背筋をはい上がってきた。

「あァッ…!?」

「ん?なんだ、イイ声出すじゃねぇか。それじゃ、そこは“兄さん”に攻めてもらいな」

ず……、と男の指が体から抜かれて、俺はベッドを横切るように押し倒された状態で離れていく男を
見た。
その時、カメラを構えている男が一瞬だけ目に入る。いつの間にか別の男が増えていて、しっかり二台
のビデオカメラで俺と兄さんの姿を捉えていた。
もしかしなくても、俺たちは奴らにハメられたらしい。俺と兄さんがレイプされる様をビデオに撮って
売りさばくつもりだ。

―――嫌だ、こんなの…!!

起き上がろうとした瞬間、男に投げられるように兄さんが俺に倒れてきて、慌てて支えてやった。

「っん、…ラ‥‥アイル…っ」

ビデオに撮られていることを意識して、兄さんは俺の偽名を呼ぶ。
目尻には涙。兄さんも怖いんだ。後ろで兄さんの腰を掴んでいる男のことが。

「さぁ、お前の弟のここに挿れるんだよ」

男は俺の膝裏を掴むと左右に大きく広げた。濡れた場所が男と兄さんと、カメラの前に晒される。

「嫌だっ…!!俺たちはそういう仕事はしない…!!」

「この業界に入ってきて、それが通用すると思ってんのか?」

「それでも、俺たちはっ‥‥ひ、ぃ…ァァッ!!」

言葉の途中で兄さんは喉を反らせて鳴いた。ビクビクと体を反応させて、耐えるようにシーツを握りし
める。
俺は上半身を動かして、男が兄さんに何をしているのか見ようとしたけれど、バランスも取れないし何
も見えない。

「駄、目…。アイル、見るな…っ」

兄さんは乱れた呼吸の下から言った。

「見なくってもわかるよなぁ。お前の兄さんもいい反応すんだからよっ!」

「やぁっ!!…っ、ぁ!ァァッ…!!」

俺の目の前で甲高い声を上げて喘ぐ兄さん。
挿れられてる。犯されて、それで泣いてる。

「ほらよ、弟も物欲しそうな目して見てるぜ。挿れてやれよ」

「嫌、だっ…!!」

「兄さ‥‥」

喘ぎながら抵抗してる。兄さんは俺に優しいから。
でも俺だって、兄さんだけにこんなことさせていられない。

「っ、アイル!?」

兄さんの先走りを指に絡めて、俺は自分の場所を拡げた。

「いいよ、兄さん…挿れて…。ヤらなきゃ、終わらない…」

「よくできた弟だなぁ?心配すんな。俺がちゃんと挿れさせてやるよ」

男の手が兄さんの性器を包み、先端を俺に当てがった。

「手ぇ離していいぜ、弟。深呼吸しな」

俺は不安そうな兄さんの顔を見上げながら、言われた通りに息を吸う。その途中で、男の手によって、
俺と兄さんは深く繋がった。

「ぁっアアアァッ!!は、ぁぁっ、‥‥っ」

ハ、ハ、と忙しく息をする。兄さんも眉をしかめて俺の締めつけに耐えていた。
折り重なった二つの躯をカメラが映す。同じ顔が同じ声を上げてよがってる。しかも演技なんかじゃな
い。

「や、待っ…動かな、ぁああっ!!」

「兄さ…っ?ひ、やァッぁぁっ」

男が腰を揺らし、その動きが俺にも伝わって二人して悲鳴を上げた。
兄さんは俺の肩口に額を乗せ、俺も兄さんの両手を掴む。
じゅ、じちゅ、と音がしている。俺と兄さんの繋がった場所はそんなに大きく動いてはいないから、こ
れは男が立てている音だ。

「んぁっ、はっ、はァッ!!ぁっ…」

「ンだよ。ちゃんと弟にも腰振ってやれよ。自分ばっかよがりやがって」

「やだ…っ。そんな、ひどいこと…したく、な‥‥ぁっっっ!!」

「っ、ア…ぁんっ!!」

ぐん、と強く俺の中まで打ちつけられた。男が無理矢理、兄さんごと突いたんだ。そんなことしたら、
兄さんの中が傷ついてしまう。

「兄さ、んっ…ぁ、ちゃんと、揺らして…ぇっ。我慢…んっ…しな、いでっ。傷…つい、ちゃう…っ」

「アイル…っ」

言葉の途中でも男は変わらず強い力で突き上げてきている。振動は伝わり、何度か兄さんの先端が前立
腺を掠めていた。
もどかしくて、気も狂いそうだ。

「リィルっ…、俺、もう…辛いっ!!イかせてっ、リィルっ!!」

「アイ、ル‥‥っ。…くっ、ぅ!!」

ずんっ、と一際強く突き上げられた。同時に男の手が、兄さんとの腹の間にあった俺の性器を握り、上
下に擦り始める。
急激に攻め立てられ、俺はだらしなく開いた口から淫らな声を上げるばかり。

「ァァッ、んっ、はぁんっ…!!ぁっ、そこぉっ…!もっと…、リィル…っ、リィル…!!」

「ふ、ぅん…っ、んんっ、ん…も、こわれ、るぅっ…!アイル…っ、ぁぁぁっ!アイル…っ!!」

兄さんの涙と唾液が肩を濡らす。もう恥辱なんて感じる理性などない。

「リィル…っっ、ぁぁっ!アアアァ…ッ!!」

「ァァァっ‥‥、くっ、アイル…!!ぁっ、アァッ!!」

ビュルッ、と俺の吐き出したものが二人の躯を濡らした。
俺の中に性を吐き出した後も、兄さんは数回、男に強く腰を打ちつけられ、射精の余韻から抜け出せな
いまま快楽を押しつけられた。男が満足げに笑って兄さんの腰を離した時には、兄さんは俺の内股を汚
して、気を失った。

「今回のギャラだ。残りは後で口座に振り込んどいてやる。思ったよりいいのが撮れたからな。いくら
 か上乗せしといてやったぜ」

気絶した兄さんを腕に抱いたまま、傍らに投げられた茶封筒を横目で見た。そこそこ中身がありそうだ
がそんなものより、今は目を覚まさない兄さんが気に掛かる。
男たちは既に身支度を整えて、最後に赤髪の男が鍵を机に置く。

「俺たちは先に出るぜ。鍵は帰る時に下のポストに入れとけ。じゃあな」

部屋の扉が閉じ、玄関を出て行く音がする。

「――…兄さん。ニール」

俺が呼びかけると、兄さんは小さく声を漏らした。

「ん‥‥‥」

「起きて。体を拭こう」

頭を起こし、兄さんは額を押さえる。

「ん…あぁ‥‥。悪い、気絶してたか…?」

「ちょっとな。アイツら、もう帰ったよ。兄さんは大丈夫?」

「大丈夫だ、たぶん。お前は?」

「大丈夫」

兄さんはぎこちなく俺の横に起きあがると、一瞬だけ眉をしかめた。たぶん、中に出されたものが不快
感を呼んだんだろう。
表情を歪めて視線を転じた先に、ギャラの入った茶封筒を見つける。

「ライル」

「なに?」

兄さんは茶封筒の中身を確認しながら、静かに言った。

「もう…こんな仕事やめようぜ‥‥。ちゃんとした仕事探そう。もう普通に働ける歳になったんだ。こ
 んな仕事、続けなくったっていいだろ…」

「――…そうだな」

俺は素直にうなずいた。それから、怖いのと寒いのとで震えが止まらなくなった体で、兄さんに抱きつ
いた。

「ちゃんと生きよう、ライル」

兄さんの腕が俺の背中を抱いた。
兄さんは目を閉じて、少し泣いている。
だけど俺はベッドの先の床を、ただじっと見つめていた。


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なんだこの鬼畜作品。たまにこんな鬼畜を書きたくなるんだ。普段は甘々が好きだけど。
ホント、ディランディ兄弟ごめんなさい。

で、サーシェスの商売上手について。
これ前編のほうはモザイク入ってて、しかも最後が気になる感じで終わってる。これでもう続編がある
と聞いた変態どもは大枚はたいてでも食いつくでしょう。後編はモザイクなしでめちゃくちゃ犯罪の域
だし。
商売上手だよ、もう。
ところで実際のAVってどうなってんですか。テキトーに書いちゃってますけど。
ま、いいや。皆さんも深く追求しないでくださいお願いします。

2009/09/08

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