とりっく・おあ・とりーとっ?



初めに目を覚ましたのはエステルだった。
穴に落ちる前と同じ草むらに、自分の手を握ったツイラーグと、手を伸ばしているエトワールが気絶
している。

エス「うわぁぁぁん!ツイラーグとエトワールが死んじゃったぁぁぁ!!」

水溜まりでもできそうなほど大泣きするエステルに、ぴくりとツイラーグが動いた。

ツイ「エステル…大丈夫、生きてるから…」

エス「ツイラーグっ!!」

起き上がったツイラーグにガバッと抱きついたエステルはそのままのしかかって泣き続けている。
ツイラーグは無表情でエステルの頭を撫でていた。

ツイ「エトワール、起きてる?エステルが泣き止むまでちょっと待ってね」

エト「あ、うん…」

それからしばらくして泣き止んだエステルの手を繋いで、ツイラーグとエトワールはAEU弁当へと戻る
道を辿った。屋敷へ続く道には大規模な工場の案内が出ており、その先に自分たちの目指していたも
のはないのだと悟ったからだ。
幸いにも商店街のほうは変わらず見えたので、三人はAEU弁当を目指すことにした。

エス「あ!おべんと屋さん!!」

ツイ「コーラいるかな…」

三人は店の前に立ってみて、いつもと違う雰囲気に戸惑う。同じ風景なのに、小一時間前に訪れたあ
の店とは違うものに感じる。

ツイ「開けるよ…」

「「「こんばんはー…」」」

?「あいよいらっしゃーい」

「「「!!?」」」

エス「父ィーッ!!!!」

?「うぉっ!?なんだ嬢ちゃん、迷子か!?…って、父?」

その人物は抱きついてきた子どもをよく見る。

エス「早く帰ろう!ナナのとこ帰ろう!?もう怖いのやだ!!」

?「ナナ?ナナって…もしかしてナナシか?」

エス「そうだよ!!帰ろう父!」

?「俺が父って呼ばれてて、ナナシとそっくりの顔の子がナナシの所に帰ろうって言ってて‥‥!」

ぐるぐるとめまぐるしく頭を働かせていた人物は厨房を振り返って叫んだ。

?「前科あるけど言ってくれればちゃんと責任取ったのになんで俺に黙って産んだんだよナナシぃぃ
    ぃ!!!!」

厨房から片手鍋が飛んできた。

?「うぎゃあ!!」

?「誰が何したっつったこの馬鹿蟻!!」

アリ「いきなり投げんなよナナシ!たんこぶできただろ!!」

ナナ「で?」

アリ「へ?」

ナナ「俺が何したって言った?」

ユラリと殺気立つナナシ。しかし彼の腹の辺りにどすっとエステルが抱きついた。

エス「ナナぁー!!」

ナナ「!?  なんだ!?」

アリ「何って、俺とお前の子どもじゃないのか?言ってくれればちゃんと責任…」

ナナ「常識を考えろ!俺は男だぞ。どうやって産むというんだ!?答えてみろ。十文字だ」

アリ「え、えっと…『ミラクル』?」

ナナ「答えになってない。仮になっていても四文字だ。疑問符を入れて五文字。十文字以内というの
   は七文字以上十文字以下を指す」

アリ「『ミラクルっぽい何か』」

ナナ「答え直すな!しかも直す前の答えより更に曖昧になっているぞ馬鹿!!」

アリ「いだだだだだ!!」

フライ返しの往復ビンタに悲鳴をあげるアリー。
そのDVっぷりにドン引きのエトワール。

ツイ「あ、気にしないで、いつものことだから」

エス「ナナはツンデレなのよねっ!」

エト「これはツンデレというか‥‥」

ナナ「で!この子たちはいったいなんなんだ?」

アリ「だから俺にもわかんねぇんだって!」

エス「ナナも父もあたしのこと忘れちゃったの!?」

ツイ「むしろ“知らない”って感じじゃないか…?」

その時だ。店の扉が再び誰かによって開かれた。

?「こんばんはナナシさんっ

ナナ「!  あぁ、ニール坊やか」

?「親父ー邪魔するぜー」

?「こんばんは、お邪魔します」

アリ「馬鹿息子とアレルヤ君も一緒か。酒盛りの準備はできてるぜ。できてっけどよ…」

パト「あ?なんだこの子ら」

アレ「こんばんは、可愛いお化けさんたちだね」

ロク「まだお菓子残ってたよな?ライルー!お菓子お菓子!」

?「はいはーい!」

ロックオンが店の戸口から顔を出して、遅れてやって来る人物に声をかける。エトワールの体に緊張
が疾った。

?「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうお化けさんはどこかなっ?★」

エト「ぎゃぁぁぁ父さんどうしたのぉぉぉぉ!!?」

現れたのは某ガソダム種運命のミーアコスをしたライル。手にはお菓子の入った籠を持っている。

エト「熱でもあるの!?脅されてるの!?」

ライ「俺は至って元気だけど?」

エト「きょとんとしないでぇぇぇ!!ちょ、ニールの上着貸して!ていうか早く着替えてぇぇぇ!!」

ライ「えぐっ、なんか不評だよニールぅ…(涙)」

ロク「泣くなよライル(苦笑)」

エト「泣きたいのはこっちだぁぁぁ!!」

ライ「じゃあ選べばいいだろ!!さぁ、どれがいい!?なんでも着こなしてみせるぜ!?売れっ子レイヤー
   の名にかけて!!」

アレ「開き直ったね(笑)」

エト「そんな名前ないでしょぉぉぉ!?」

ツイ「落ち着いてエトワール(汗)」

エス「こんなに元気なエトワール始めて見た!」

ツイ「エステル、喜んじゃ駄目。エトワールが可哀想でしょ」

エト「こんなの父さんじゃないよぉぉぉぉ!!(号泣)」

ライ「わわっ!え、えっと、お父さんをご所望なのか!?死神か滅却師の衣装しかないよニール!!」

ロク「女の子のコスばっかりしすぎなんだよ」

ライ「だって可愛いんだもん!!」

エト「エステル、ツイラーグ…オレ、今まで楽しかったよ…」

エス「死のうとしちゃ駄目ぇぇぇ!!なに!?道連れにする気なのその拳銃は!!」

ライ「ぅおっ!?火薬師の俺を殺しても得はないぞ助けてニール!!」

ロク「取り敢えず…なんか勘違いされてるんじゃないかな…?」

ツイ「オレもそう思います。もしかして、ここってオレたちが生まれる前にナナが会ったっていう、
   別世界のナナの世界なんじゃないの?」

エス「言われてみれば…。あ!父にしっぽがある!」

アリ「なにぃっ!?」

ナナ「お前が驚くな。この束ねたボサボサ髪のことだろう」

アリ「ぎゃっ!引っ張るなよ!!」

ナナ「つまり、お前たちはもう一人の俺の世界から来て、もう一人の俺ともう一人のアリーの子ども
   だと…?」

エス「そうだよ!!あ、エトワールの父はライルだけどね!」

ライ「へー!へー!なぁっ、もう一人の俺ってかっこいいの?」

エト「少なくともそんな露出の高い恰好はしない。女装もしない」

ライ「きっと似合うのになぁ…」

エス「ニールは似合ってたよ!妖精さんのコスプレ!」

アレ「え!?(ドキドキ)」

パト「そこ、ドキドキすんな」

ロク「べ、別世界の俺でも、浮気したら狙い撃つかんなアレルヤっ(汗)」

アレ「し、しないよ!!僕はロックオン一筋だよv」

ロク「アレルヤっv」

ライ「そんな二人の為に家に帰ったらちゃんと衣装用意してあるからな!」

パト「衣装?…いや待て、なんか嫌な予感が‥‥」

ライ「ズバリ、赤ずきんちゃんと狼!」

ロク「どうしようアレルヤ…。なんか俺、ドキドキしてきた…」

アレ「大丈夫!僕が美味しく食べてあg」
パト「子どものいる前で自重しろ!!!!!!」

エス「別に大丈夫だけど…」

ツイ「しっ!」

アリ「じーっ‥‥」

ナナ「…その目はなんだアリー」

アリ「いや、俺たちもイチャイチャ…」

ナナ「その辺の猫とでもじゃれついてこい」

アリ「ぐすっ…(泣)」

エト「取り敢えず…この父さんは父さんじゃないんだね?」

ツイ「そうだね」

エス「え、じゃあさ!あたしたちどうやって帰るの!?もう父とナナに会え…ぐすっ…会えないの…っ?」

ツイ「大丈夫だよエステル。父とナナなら絶対に迎えに来てくれるよ。だから泣かないで。オレが一
   緒にいるから」

エス「うん‥‥‥」

ライ「しっかりしてるな」

ツイ「オレはエステルのお兄ちゃんだから」

ライ「キュンっv聞いた!?ニール聞いた!?いいなぁ!俺もニールに守ってもらいたい!!」

ロク「聞いた聞いた。落ち着けよライル。別世界のお前の息子がダメージ受けてるから」

エト「いいんです、気にしないで…」

ライ「え、あっ‥‥。ごめんな、気づかなくて。俺、普段からこうなんだ。でも、そっか。少し勉強
   になったかな」

エト「え‥‥?」

ライ「別世界の自分は全然違う生き方してるんだってこと。俺、エトワールに会えてよかった!」

エト「っ、名前…っ!」

ライ「さっきから何回も呼ばれてたじゃない。“星”って意味だよな。綺麗でいい名前だ♪」

エトワールは赤面して俯く。ライルは「可愛いーっ!!」と叫んで抱きしめた。

ナナ「ともかく、もう一人の俺が迎えに来るまでここにいるといい」

アリ「だな!料理はたくさん作ってあるから上がって待ってろ」

ナナ「一応ヴァスティには連絡しておくか。アリー、電話使うぞ」

アリ「一人でできるか?」

ナナ「馬鹿にするな!!‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥むぅ」

アリ「かわいっ…コホン。パトリック、居間に料理並べといてくれ。ナナシ、貸してみ?」

ナナ「うぅ‥‥‥‥‥」

パト「(こっちもバカップル全開かよ…/汗)‥‥りょーかい。行くぜちびっ子ども。手伝え」

エス「はーい」

ツイ「エトワール、ライル、行こう」

エト「うん」

ライ「はいはーい」

アレ「僕らも行こうかロックオン」

ロク「うん‥‥。はぁ…」

アレ「どうしたの?」

ロク「え、うん…。別世界のライルやナナシさんは子どもがいるんだな…」

アレ「そうだね」

ロク「‥‥‥‥俺もアレルヤと子ども作れたらいいのに…」

アレ「!!!?」

ロク「な?(苦笑)」

アレ「どうして、」

ロク「うん?」

アレ「どうして男同士じゃ、愛を形にして残せないんでしょうね…」

ロク「アレルヤ…っ」

アレ「でも、僕が世界で一番愛しているのは貴方だってことに、変わりはありませんから」

ロク「俺も!俺もアレルヤ大好きっ!!いつかもしも万が一、モレノさんがそういう技術を開発したら、
   俺、絶対にアレルヤの子ども産むからな!」

アレ「本当?…あ、でも‥‥」

ロク「なんだよ。嫌か?」

アレ「ううん。ただロックオンが子どもたちに取られちゃうと思うと、ちょっと妬けるかも」

ロク「しょうがない奴めっ!vv」

アレ「それくらい好きなんですvv」

えへへ!と幸せそうに笑っていたロックオンは抱きついたアレルヤの腕の中で、ふいに「あれ?」と
顔を上げた。

ロク「そういやあの子たち、別世界のナナシさんとアリーの子どもだって言ってたよな?」

アレ「そうですね」

ロク「どうやって産んだんだろう」

アレ「あれ‥‥‥?」

しばし沈黙。

アレロク『ま、いっか』

所詮はそんなもんである。



果たして子どもたちは無事に元の世界へ帰れるのだろうか。


--------------------------------------------------------------------------------------------

所詮彼らは奥スナーズですから難しいことは深く考えません(爆)
奥スナライルはFSキャラにとっては衝撃でしょうね(苦笑)
でも必死なエトワールもアホの子ライルも可愛かった。電話をかけられないナナシさんとかも。
十文字以内云々は友人と話してて浮かんだネタです。ていうかこのハロウィンネタの大半がそうです。

奥スナアレロク自重(笑)

2008/11/02

BACK NEXT