とりっく・おあ・とりーと!



小さな吸血鬼と魔女っ子、ジャック・オ・ランタンの帽子を被った子どもがソレスタルビーイングの
屋敷内を駆け回る。

コンコン!

ロク「はいはーい」

カチャ

「「「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」」」

部屋にいたロックオンは訪れたエステル、ツイラーグ、エトワールを見て頬を緩ませる。

ロク「可愛い悪魔さんたち、ちょっと待ってな」

ロックオンは一度部屋に戻り、小さな袋を持ってくる。

ロク「はいよ。お前らすごいな。お菓子くれないとイタズラが半端ないんだって?」

エス「『こういうのは徹底的にやるものよ。無礼講だと思って思いっきりやりなさい!』ってスメラ
   ギ姉さんが!!」

ロク「あの人はなんつー教えを…(苦笑)」

エス「ということで、ティエリアにはテッケンセイサイを加えてきました!」

ツイ「“鉄拳”は加えてないよエステル。オレたちがやったのはパイ投げ」

ロク「あぁ…さっきの絶叫はそれか…」

エト「アレルヤはまだ保育園?」

ロク「あぁ。今日は子どもたちのお祭りだかんな。助っ人でもギリギリまで手伝いたいんだと」

エス「そっかぁ、じゃあ先に父のところ行こうかな」

ロク「ゲイリーはまだ弁当屋だろ?三人だけで行くのか?」

時刻は夕方4時。ハロウィンの頃になると大分薄暗くなる。

ロク「俺も行くよ。アレルヤを迎えに行くついでだ」

エス「はい!!」

ロク「‥‥‥‥‥エステル、なんだこれ」

エス「『私の戦術予報によると、夕方からミッションを開始した場合、あなた達がAEU弁当へ行く頃に
   は大分薄暗くなっている筈。そこでロックオンならあなた達だけで行かせるのは心配になって、
   自分もついて行くと言う筈よ!』ってスメラギ姉さんが!!」

ロク「よく覚えてんなー…じゃなくて!!だから、この羽根のついたミニスカの服はなんだ!!」

ツイ「妖精ルックだね」

ロク「俺いま何歳だと思ってんの!?作者特権で仮に29歳だとしても、三十路手前の男が何故生足晒さ
   なきゃならないんだ!!」

エス「『ロックオンは美脚・美尻だから似合うわよぉ♪』って
ロク「ミス・スメラギが言ったんだろ!?あの人は子どもに何教えてんだ!!ていうかこの服に尻は関係
   ないだろ」

ツイ「一応着る気なんだ」

ロク「ばっ、着ねぇよ!!」

エト「えーっ!!アタシ楽しみにしてたのに!」

ロク「着ねぇっての!!」

ツイ「アレルヤも喜ぶと思うけど」

ロク「うっ‥‥」

エト「『保育園でお手伝いする時、僕も仮装するんだよ』ってアレルヤ言ってた」

ロク「うぅっ‥‥」

エス「ねぇニール、だめ?」

ツイ「外に出る時はちゃんとコートも用意してあるってさ」

ロク「‥‥‥‥‥わかったよ」

渋々折れたロックオン。部屋で着替えると言って扉を閉める。
コソコソ話をする子どもたち。

エト「本当にスメラギさんの予報通りになったね」

エス「スメラギ姉さんすごい!!」

ツイ「オレはニールが不憫でならない‥‥」

エト「オレも」

カチャ…

ツイ「あ、ニー‥‥‥

エス「かわいーニールー!!!!」

エト「(父親と同じ顔な分、複雑な気分…)」

ロク「ほ、ほら、行くぞお前ら!」

エス「はーいっ!!あ、せっちゃん!」

セツ「せっちゃんじゃない!!ん?ロックオン…?」

ロク「うわぁぁぁ刹那違う!!誤解だ!!これは俺の趣味じゃなくて…!!」

セツ「わかっている」

ロク「せ、刹那…?」

セツ「アレルヤの趣味だろう?アイツ可愛いものが好きだから…」

ロク「それもちがぁぁぁぁうっ!!!!人の恋人を勝手に変態にするな!!違うんだ!これはミス・スメラ
   ギが…」

エト「あぁ…刹那にも預かってるよ…」

セツ「何をだ」

エト「…包帯?」

ツイ「ミイラ男になれってことかな?」

エス「せっちゃん、アタシが巻いてあげるー!」

セツ「必要ない!!エステル!お前つくづくナナシに似ているのは外見だけだな!!」

エス「ゆくゆくはナナみたいな美人さんになるのっ!」

ロク「清々しいまでのポジティブシンキングは確実にゲイリー譲りだよなぁ…」

ツイ「取り敢えずオレ、謝ったほうがいい?」

セツ「謝るのは万年春頭のお前の父親だな」

エト「また誰か来るみたいだよ」

ロク「ぅげっ!!エステル、ツイラーグ、エトワール!早くゲイリーのとこ行くぞ!!」

エス「きゃぁっ!?あっ、またねーせっちゃーん!」

セツ「だから俺は!!‥‥まぁ、いいか」



ロックオンにおんぶされ、エステルは刹那に向かって手を振る。その後を大人しくついて行くツイラー
グとエトワール。
保育園に着くと、それまでもそわそわしていたロックオンが更に落ち着きなく視線を泳がせる。

ツイ「どうしたのニール」

ロク「や、あの…」

ツイ「中の様子、見て来ようか?もうほとんど園児はいないみたいだけど」

ロク「頼んでもいいか?」

ツイ「うん。エステル、エトワール、行く?」

エス「行くー!!」

エト「オレはニールと待ってるよ」

ツイ「わかった。行くよエステル」

トテトテと吸血鬼の手を引いて中に入っていく魔女っ子。
しばらくしてツイラーグだけが戻ってきた。

ツイ「もうみんな帰ったみたい。エステルは後片付け手伝ってるよ」

ロク「そっか」

?「ロックオン!」

ロク「! アレルヤ…っ!」

アレ「ちょ、ロックオンその恰好…!!」

ロク「あ、いや、これは…っ」

アレ「目に毒すぎるよ!!園長せんせー!!何か上着ありませんかー!?」

ロク「ぎゃぁぁぁ!!待てアレルヤ!人を呼ぶな!!」

アレ「だってロックオン…あ、ハレルヤ…!!」

ハレ「ずいぶんエロいかっこしてんじゃんかよ、ロックオン。おめー、それちゃんと下はいてんのかよ」

ロク「捲るな!まさぐるな!!はいてるよ!!なんつープレイだ!しかもお前のその恰好、洒落になんねぇ…」

ハレ「ん?狼男?」

ロク「そうだよ!」

その時、一人で後片付けを手伝っていたエステルがツイラーグとエトワールを呼びに来る。子どもた
ちが去った後、自分も手伝いに行こうとしたロックオンの手を捕まえる。
そっと耳元で囁いた。

アレ「本当は今すぐにでも、貴方を食べてしまいたい…」

ロク「夜までおあずけだ、アレルヤ。今は、味見だけな…?」



ツイ「ねぇエステル…」

エス「なぁに?ツイラーグ」

ツイ「よく空気読んでくれたなぁと思った自分がなんか悲しくなるんだけど…」

エス「アタシ、父とナナもそうだけどアレルヤとニールがイチャイチャしてるのも子どもには刺激が
   強いと思うのね」

ツイ「華麗にスルー?」

エト「確実にエステルのツイラーグに対するラブアタックの激しさは周りの影響だと思う」

エス「イエース!ザッツライト!」

ツイ「肯定しちゃったし。さ、こっからは本当に大人の時間だから覗きは終わりだよ」

エス「はーい」

エト「返事はいいよね…」





  ◇◆◇

帰りはゲイリーと一緒に帰るということで、一足先にマンションに帰ったアレルヤとロックオン。
きっとこれから子どもには見せられない熱い夜を過ごすのだろう。
子どもたちはAEU弁当のドアの前に立った。

ガララッ!

「「「お菓子くれなきゃイタズラするぞ!!」」」

パト「おー?ゲイリー!お前んとこの子どもら来たぞー!」

ビア「エステル!?ツイラーグ!?エトワールもいんのか!?」

エス・ツイ「「お菓子くれなきゃイタズラするぞ!!」」

バシッ!バシッ!!

パト「ぎゃははは!ゲイリーひでー様!パイ人間だ!!」

ビア「宣言と同時にパイ投げは卑怯だろうが!!」

エト「エステル、ツイラーグ、綺麗な金平糖もらったよ」

パト「前にバイトした駄菓子屋からのコネでもらったやつだ。可愛いだろ?」

エス「わーい!ありがとー!!」

ツイ「ありがとー」

ビア「俺を無視すんなー!!」

エト「お菓子くれなきゃイタズラされるよ?」

エトワールはパチンコにピーナッツをセットして構えている二子を指差す。

ビア「わかってるよ!!ちょっと待てって。来な」

タオルで顔を拭いながら厨房に子どもたちを呼ぶゲイリー。

エス「うわぁ…!うさぎさんだー!!」

ツイ「父すごーい!!」

エト「‥‥‥‥すごい」

パト「明日の下準備も手伝わねぇで何するかと思ったら和菓子作りだよ。こいつの手先の器用さには
   感服するぜ」

ツイ「父、和菓子職人だったの!?」

ビア「本で読んだだけだ!!」

「「「‥‥‥‥‥‥‥」」」

パト「俺も驚いた…」

ビア「ほら、食いな!」

エス「コーラ、なんか入れ物貸してー」

パト「コーラ言うな!!」

ビア「えぇっ!?食えよ!」

エス・ツイ「ナナに見せるのー」

ビア「お前らぁぁぁっ!!(泣)」

エス・ツイ「クリームくっつくから来ないで」

ベシッ!

ビア「いでぇぇぇ!!」

パチンコに仕掛けられたピーナッツがゲイリーの額に当たった。

パト「顔洗って服着替えてこいよ。今日はもういいから」

ビア「え?でも明日の準備…」

パト「元からやらせるつもりねーよ。子どもら来てからな」

ビア「ありがとう若旦那!!」

パト「クリームくっつくからこっち来んな!!」



こうして早めに帰れることになったゲイリーは子どもたちを連れて屋敷への帰路につく。
その途中‥‥。

ビア「おいエステル!急いで転ぶなよ!ツイラーグ、エトワール。エステルの手ぇ繋いで走らないよ
   うに言ってくれるか?」

エト「わかった」

ツイ「エステル!手ぇ繋いで帰ろう?」

エス「腕組んで帰ろう!?」

ツイ「…まぁ、それでもいいけど‥‥」

エト「‥‥‥‥‥‥」

ツイ「ほら、おいで」

エス「うんっ!あ、ちょっと待って!なんか光った!!」

ツイ「‥‥オレたちが行こうか…」

エト「そうだね」

エス「ツイラーグ来てー!!なんかぐるぐるのキラキラなのー!!」

ツイ「いま行くよ。…っ!?エステル!?」

エス「にゃっ!?」

草むらにしゃがんでいたエステルの姿が消える。まるでそこにあった落とし穴にでも落ちてしまった
かのように。

エス「ツイラーグ助けて!!父ィーっ!!落っこっちゃうぅぅっ!!」

否、落ちていなかった。穴の淵にエステルの小さな手が見える。

ツイ「エステル!!待ってろ!!」

エト「エステル…っ!」

ビア「頑張れエステル!ツイラーグ、エステルの手首を掴め!!」

穴の淵に辿り着いたツイラーグは、離れそうになっていたエステルの手を間一髪捕まえる。

ツイ「なに…っ、これ…、うわぁぁっ!?」

エト「ツイラーグ!?」

穴に強い力で吸い込まれる。エステルに続いてツイラーグも穴の中に引きずりこまれてしまう。そこ
にエトワールが追いつくが、穴の手前から既に引っ張られて、穴の淵に手をつく前に穴へ真っ逆さま
に落ちていった。

ビア「エトワール!?エステル、ツイラーグ!?」

ゲイリーが辿り着いた時、穴の中の光の渦は消え去り、ただの出来損ないの落とし穴になってしまっ
た。

ビア「エステル…ツイラーグ…エトワール‥‥」

ゲイリーはしばらく辺りを探していたが見つからないとわかると、ソレスタルビーイングの屋敷へ駆
け出した。



果たして子どもたちはどこへ行ってしまったのか…――。


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吸血鬼→エステル、魔女ッ子→ツイラーグ、カボチャお化け→エトワール、です。
エステルの腐女子警報(苦笑)

ちなみに作者はツイラーグとエステルの事を合わせて「二子」と呼びます。ツイラーグも含む場合は
「三子」です。

2008/11/02

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