open your eyes〜leaf wolf〜 あの日の記憶は、どれほどの時を過ごそうとも忘れることはないだろう。 「葉狼」 あの人が静かに私を呼び、私自身とも言える石をそっと地面に置いた。そして、あの人の声に応じた草 木が私と一緒に石を覆い隠す。 私はただ愛しげに、淋しげにあの人を見つめた。 「葉狼、頼んだぜ」 あの人の指が優しく私に触れる。撫でて、撫でて、そして離れた。 冷たい体に温もりを残して。 この体にまだ温かい血を残して。 赤い瞳と赤く濡れた体のまま、あの人は行ってしまった。 私は貴方のパートナーではなかったの? 私は貴方の力ではなかったの? “行かなきゃ” 強い意思はあるのに、弱かった石は砕け、あの人の背を追えない。 私は別の仲間に救助され、組織に戻った。そこにはあの人の姿はなかった。 「ねぇ葉狼、あの人はきっと生きているよね……」 救助されたその後で問われたことに、私は首を縦に振った。 「そうだよね。うん、生きているよね」 あの人の恋人の腕に、私は静かに身を預けた。 「強くなって、きっと助けに行こう。迎えに行こう。ね、葉狼」 私はまた頷く。あの人の恋人は微笑んで私の背をゆっくりと撫でた。その手首には私のものとは色違い の石があった。 その石は、意思の強さを示すかのように目映いオレンジ色の光を放っていた。 そうだ。強くなろう。 もっともっと強くなろう。 次のパートナーには、もうあんな怪我を負わせたりしないように。 そう決心した。その次の日に、粉々になったオレンジ色の石が私の隣にやって来た。 持ち主はあの人と同じように行方知れずになった。 まだ駄目だ。もっと強くなろう。 もっと。もっと。 四年の月日の間に私の傷は癒え、新しい力も手に入れた。 次のパートナーはあの人の双子の弟だった。これはなんという運命だろうか。 守ろう。守ろう。強くなろう。 「よろしくな、葉狼さんよ」 私に触れた指は、最後に触れたあの人ほど温かくはなかった。けれど、赤くもなかった。 染めるものか。彼の血は身体の内に秘めておくものだ。 彼の笑顔を守ろう。 あの人と、あの人の恋人の笑顔を取り戻そう。 音が聞こえる。 懐かしい音。 あの人と出会う前。ずっと昔に聞いた音。 なんだろう。 でも、あぁ、少しだけ、 あの人の声も聞こえた --------------------------------------------------------------------------------------------- これを学校の授業で提出しました(笑)バレないバレない……。 この後の展開が、わかる人にはわかっちゃう感じの短編ですが、とにかく8月6日に上げなきゃ!と思 いまして……。 吸血鬼パロのハロが全シリーズを通して、一番落ち着いてるんじゃないかなぁ、と思った(苦笑) 2009/08/06 |