Wish room 秘密の地下室に残された手紙。 それは解読できたものの、未だ閉じ込められた密室から脱出する術がない。 カイル・ハイドは朦朧とする意識の中、入口の扉の横へ倒れるように座り込んだ。 「(あぁ…視界が白けていく…。俺は、こんな所で…)」 カイルは虚空を見つめ、掠れた声で呟く。 「ブラッドリー…――。俺は、ようやく、お前、に‥‥――」 カイルの脳裏に最後に己が銃口を向けた親友の姿が浮かんだ。――ずるり、とカイルの体が傾く。 冷たい床にカイルの頬が当たり、意識が遠のいていった。 霞がかった頭に廊下を近づく靴音が響く。脇の扉の前でそれは止まり、控えめな声がカイルを呼ん だ。 『――…ハイドの旦那?旦那、此処にいるのか?』 ルイスの声――意識を失いかけていたカイルは僅かな気力を振り絞って声を出した。 「ルイ、ス‥‥」 『旦那!?ちょっと待ってくれ!今開ける…!!』 閂が外される音がして、慌てた様子のルイスが部屋に飛び込んでくる。 「旦那!しっかりしろ!ハイドの旦那!!」 急激に増した酸素の量にカイルは僅かに咳き込んだ。その背を撫でながら、ルイスはカイルをゆっ くりと腕に抱き起こす。 「ルイス‥‥」 「いい。呼吸が落ち着いてから喋ってくれ」 カイルはゆるゆると首を振り、扉を指差した。 「扉…閉めるな‥‥。閉じ込め、られ…っ、けほっ…けほっ…!」 「あ、あぁ!わかった…!!此処にいれば扉は閉まらねぇ!大丈夫だぜ」 そこで漸く安堵の表情を浮かべたカイルは今まで無意識に強ばらせていた体の力を抜く。ルイスの 腕にカイルの体重が、ちゃんと此処に存在していることを証明するかのようにかかった。 「旦那…、顔が青白いぜ。大丈夫か…?」 「あぁだいじょう‥‥けほっ…、大丈夫だ…」 「ミラのことも心配だが、取り敢えず今は旦那のほうが少し休んだほうがいい」 「すまない」 カイルは静かに瞼を閉じると、酸素を求めて喘いでいた呼吸を落ち着かせることに専念する。ルイ スはそんなカイルを見入るように見つめてから、やがて考えを切り替えるように頭を振って部屋の 中を見渡した。 「このホテルにこんな部屋があったなんてな。さすがの俺も気づかなかったぜ」 「おそらく、この部屋以外にも隠し部屋がある筈だ。そこにいた誰かが――おそらくダニングだろ うが――外から閂をかけて俺をこの部屋に閉じ込めたんだ」 「あまりに帰りが遅いから心配して来てみてよかったな…」 「あぁ、お前が来てくれて助かった。お前がいてよかったよ、ありがとうルイス」 ルイスを見上げカイルは微笑む。その笑顔にルイスは顔を赤くしてガシガシと頭を掻いた。 「や、やめてくれよハイドの旦那…」 「なんだ、照れてるのか?」 「そうじゃな‥‥そうだよ!」 カイルはゆっくりと体を起こし、ルイスから離れてさっきと同じように壁に寄りかかって座る。そ れから腕を伸ばして部屋の角にある机を指した。 「机の上にある手紙を見てくれ。この部屋で見つけた」 ルイスは頷いて机の上の手紙を取る。 カイルは床に座ったまま自分の推理を話して聞かせた。 そして全て話し終えると、壁に手をついて立ち上がる。ふらついた体を慌てて駆け寄ったルイスが 支えた。 「大丈夫だ…。こんな所でへばっていたらブラッドリーを見つけることもできない。――さぁ、ミ ラを捜しに行くぞ。お前もついて来てくれ」 「はいよ。任せときな、ハイドの旦那!」 先に部屋を出たカイルの後を追うルイス。 ルイスはその背中を見つめながら僅かに唇を尖らせた。 「(ブラッドリー、か…。俺の三年越しの片想いをまだ邪魔すんのかよ‥‥)」 ――アンタがアンタの親友を想うくらい、アンタのことを好きな奴がいるってこと‥‥気づいてる かい、旦那…? ----------------------------------------------------------------------------------------------- ブラ←カイ前提、ルイ→カイ。学校で授業中に筆談してた時だか食堂で空き時間に話してた時だかケ ータイでメールしてた時だか、忘れましたがなぜかこんなネタがポンと(苦笑) 実際のゲームは素晴らしい推理ゲームです。あの絵が好きーw (2008/06/04) |