熱と温もり 陰湿な空気がまとわりつく、人気のない軍の地下牢。 「ぅっ…ァッ‥‥くぅッ…!!」 一人の男の喘ぎ声が聞こえる。 「ァッ、待て…くっ、ァァッ!」 「話す気になったか?」 忙しい息の間に別の男の声が重なった。くぐもった冷静な、けれどどこか熱に浮かされたような声。 四肢の自由を奪われた兵士が、黒い衣服に身を包み真っ白な肌の肩だけを露出した男に跨がられてい た。 サイコ・マンティス。特殊部隊FOXHOUNDのサイキック。 彼は読心能力者であり、捕虜にした兵士の記憶から情報を読み取る能力を持っていた。 しかし時としてそのリーディングが失敗することがあった。それは相手がリーディングを回避するサ イコ・セラピーを受けていた場合だ。 今マンティスが跨がっている男もサイコ・セラピーによってマンティスのリーディングから逃れた一 人だ。 マンティスは男の勃ち上がったものに手を添えて、自らの腰を浮かせた。 「まだ話す気にならないか…?」 マンティスが囁く。 男はマンティスが何をしようとしているのか、自らのものがどこに挿し込まれようとしているのか、 目で追ってゴクリと喉を鳴らした。 「楽になりたければ話せ」 「ぁ…ぁ…」 上擦った声が男の口から漏れる。足がガクガクと震え、訪れない快楽の絶頂に発狂しかけていた。 マンティスは長い時間をかけて男に性的な意味合いを含んだ愛撫を施していた。男のそれは今にも欲 を吐き出さんとしていたが、マンティスのサイコキネシスによって苦しくも、先走りすら許されずに いた。 「お前達のボスはどこにいる?―――吐かなければ吐き出させない」 マンティスの冷たい指が捕虜の兵士の頬を撫でる。男は喉をひくつらせ、しかし首を横に振った。 「そうか」 マンティスは徐々に腰を落としていく。 「では俺だけ楽しませてもらうとしよう」 苦しげな声がマンティスの喉から漏れた。同時に恍惚とした悲鳴。 「っく、アァッ、アァァ…!」 「ぁっ、くうっ…!」 マンティスは男の脇に手をつき、段々深く入り込んでくる圧迫感に喘ぐ。 捕虜の男もまた締め付けられる感覚に震えた。 マンティスの指先が石牢の床に爪を立てる。鋭い眼光がマスクの下から男を貫いた。 「話せば、楽になる…っ。わかるだろう…?」 男は涙目になって震えながら唇を噛みしめる。なかなか強情で強い理性の持ち主だと、マンティスは 感心しつつ呆れた。彼は男に繋がったままゆるゆると前後に腰を揺らす。 「あァッ、よせ…!」 と唐突にグン、と男が腰を突き上げ、マンティスのより深い場所を打った。 「うぁっ、!ぁぅんっ、んっ…!!」 何度も何度もマンティスの中を穿つ。しかし欲望は解放されない。 「は、なす…話す!!話すからイかせてくれ…!!」 マンティスは男の声に俯けていた顔を上げ、マスクの下の表情に笑みを刻んだ。 その時だった。 「マンティス?」 牢の入口から大きな影が入ってきた。額に翼を広げた大烏の刺青をした大男。 「――…っ、レイヴン‥‥」 マンティスは吐息混じりの声で現れたバルカン・レイヴンを振り返る。 レイヴンは目の前の光景が単なる拷問でないことに気づくと、マンティスの腕の下に手を入れて軽々 とマンティスを立たせてしまった。けれどいきなりくわえ込んでいたものを抜かれ、 「アァッ…!!」 マンティスは喉を反らして鳴く。 レイヴンは腕の中で喘ぐマンティスを見下ろし、そしてほぼ全裸に近い捕虜の兵士を見た。その中心 でドクドクと脈打っている男の象徴も嫌が応にも目に入った。 「マンティス…貴様何をされ‥‥」 「俺がしていたんだ」 「なに…?」 「少し黙っていろ」 マンティスの指がレイヴンの口を閉ざさせる。捕虜の兵士が喉を引きつらせながら言葉を発した。 それは敵のボスの居場所とすべてのアジトの所在地、その他諸々の情報だった。 「早くイかせて…!!早く!!」 男は狂ったように叫ぶ。マンティスは自らの衣服を整えるとパチン、と指を鳴らした。同時に男の欲 が弾け、床を汚した。 限界の更なる限界まで押し留められた快感に男は狂喜の声を上げる。 マンティスはスッと腕を上げて、指先で円を描いた。 気絶しそうになっていた男の首に四肢を拘束していた鎖が巻きつき、やがて男の首を締め殺す。 「ボスに今の情報を」 何もなかったように牢屋を去るマンティス。レイヴンはマンティスの細い腕を捕まえて振り向かせた。 「貴様はいつもこうしていたのか」 ゆらりと立ち止まり、レイヴンを見上げる。マスクの下でマンティスは笑った。 「俺だって拷問の一つくらいできる。オセロットよりも優しい拷問だが、効果は見ただろう?」 「だが、お前が受け入れる側にならなくとも…!!」 「こちらのほうが慣れているんだよ。ガキの頃からやっている」 つ、とマンティスの指がレイヴンの肌をなぞり、愉しげに声を漏らす。 「抜きたい時は言え。相手になるぞ…?」 クク…と笑うマンティス。レイヴンは頬に触れたままのマンティスの手首を掴んで引き寄せた。 細い腰をがっしりとした腕の中に抱きしめる。 「っ!?」 「じゃあ今」 「…ずいぶん性急だな」 一瞬だけ見せた動揺を嘘のようにマンティスは言った。レイヴンはマンティスを見つめたまま更に抱 く力を強める。膝を入れてマンティスの足を開かせるようにして。 「レイヴン…?」 「お前は済んでないだろう?不完全燃焼なんじゃないのか?」 「!!」 レイヴンはマンティスの首筋にキスを落とす。 「この足で他の兵士を誘惑されちゃ敵わん。何故だか、俺はお前があんなことをするのは嫌だ」 「それならばお前にわからない場所でする。だから離せっ」 しかしレイヴンはマンティスの言葉を拒み、マンティスの躯全体を包むように抱いた。 「逆だ。だからせめて、俺以外の奴にはあんな姿を見せるな。見られたくない…」 マンティスの躯は中途半端に終わった行為に昂っていた。だから相手をしてくれるというのならばち ょうどよかった筈なのに。 「――…くっ‥‥」 マンティスは今まで逸らしていた視線をレイヴンと交わらせると簡単な暗示をかける。力が抜けたレ イヴンの腕の中からするりと離れた。 ふわりと宙に浮かび上がり、ステルス迷彩で姿を消す。 「マンティス!?」 暗示が解かれたレイヴンが叫んだ。反響する通路のどこかからマンティスの声が返ってくる。 『バルカン・レイヴン…お前は俺をどうしたい‥‥』 「何を言って…」 『――…壊れてしまいそうだよ、俺の世界が…』 「サイコ・マンティス!!」 遠くなっていく声に呼びかけた声は虚しく反響するだけで。レイヴンは暫くその場に佇んだ。 マンティスは誰もいないシャワールームで熱は吐き出した。 そっと肩に触れる。 触れたレイヴンの温もりは、自分の中の熱に釣り合わないと思った。 同じ人殺しの仲間の筈なのに、触れ合ってはいけないと思った…―― ------------------------------------------------------------------------------------------- いつまで経っても誘い受けの蟷螂が書けない。。。 え?そうですよ?私が目指しているのは誘い受け蟷螂です(爆) 今回はなんか最後が切ない系でしたね。 一応補足しておくと、ラストで蟷螂がわざわざステルスと空中浮遊を使ったのは、鴉に追いかけら れたくなかったからで、足音を消すためにわざわざ空中浮遊まで使ったんです。 私の文章は本当に作者にしかわからないようなこじつけが多い・・・。 2008/07/02 |