black feather 俺は今、命尽きようとしていた―――。 異様な特殊能力を持ち、まともな教育も生活すらも許されず、実験に実験を繰り返され、辿り着い た場所は戦場だった。 ただ人を殺し。 ただ人を侵し。 渇きを癒すために殺して侵して犯されて。 「頼みがある…マスクを、被せてくれ‥‥」 このマスクは、俺を守る鎧だった。 「マスクがないと…人の思念が入って来る…。最期くらいは、自分でいたい…―――俺だけの世界 に、こもりたい…!!」 ほら。現に今、俺にマスクを被せるために触れたこの男の指からも、思念が流入する…。 兵士の念。女を想う念。哀れみの念。 あぁ、気持ち悪い…。 触れられて、俺の頭の中が乱されなかったのはアイツだけだ‥‥。 マスクによって世界から隔離される。 「あぁ、落ち着く…。これで俺は…俺のまま‥‥」 いつからか、温もりなんて忘れていた。 始めから知らなかったのかもしれない。 だが、 「そこの扉を開けてやろう…――」 忘れていた、知らなかった温もりを、あの男は持っていた。 「あぁ…力を誰かの為に使ったのは…これが初めてだ‥‥」 この力は自分を守る力だった。サイコキネシスもリーディングもヒュプノティズムも。 「――…妙だ‥‥懐かしい…感覚が、する…――」 ゴトリと、力なく頭を床に寝かせた。 俺に致命傷を負わせた男は立ち上がり、女と共に部屋を出て行く。 俺はゆっくりと目蓋を閉じ―― 「(あれは‥‥)」 ――視界の端に動くものを見つけた。 再び目蓋を開く。ゆっくりと俺の横に舞い降りたのは黒羽の鴉だった。 『マンティス…――』 声が聞こえた。あの男の声が…。 「おか、しいな…。俺にあるのはリーディング能力…で、こんなサイコメトリーは…けほっ…でき ないはず、なのに‥‥」 こつん、と鴉は俺のマスクをつつく。俺は手を伸ばして、そっとその頭を撫でてやった。 「レイヴン…――」 ――…俺は…先に逝こう‥‥。 病的なまでに白い手の平に、永遠の眠りを告げる一枚の漆黒の羽根が音もなく残された。 ----------------------------------------------------------------------------------------------- 思いつきで書いたからひどいや(苦笑) コート着てる蟷螂も好きです。肩だしの蟷螂も大好きです。ていうか奴は細い(笑) あ、きっと所長室に残された蟷螂の死体を回収したのは鴉だと信じてます。泣ける…。 2008/08/04 |