[memo]





およそ一週間後には殺され、死んでいるであろうという予知を受けた7人。
その中には、私・宿禰と吉野さん、他に覚えている限りではミュージシャン志望の誠実そうな青年と
ごく普通の男子大学生(沙慈っぽい?)、馴染みやすそうな明るい二十歳くらいの女の子(クリスっぽい
?)。それから高校生くらいの男の子。
高校生の男の子は数日前にエレベーターの落下事故に遭っており、落下の直前で救助された少年だっ
た。事故の更に数日前に超能力に目覚め、母親から彼は元からそういう力を持っていたということ、
これから徐々に慣れていけばいいと言われていた。彼は物体を浮遊させる力を持っていた。
もしも自分の力が未熟でなかったら。もしも自分の力であの鉄の箱を支えていることができていたら。
その事故で彼は母親を亡くした。そのほかにも死人は出た。少年は深く後悔していた。
しかしそれを集まった他の6人は慰め、励まし、少年はなんとか生きる気力を見いだした。
7人の中で超能力を持っていたのは宿禰とその少年、大学生らしい青年、そして二十歳くらいの女の
子。
塾の教室のような場所で待機する7人。一週間後に殺されることのないように対策を練るための学習
会だ。女性講師(絹江さんっぽい?)がやってきて丁寧に最近の世間の流れを説明し始める。まるで警
察の捜査会議のようにホワイトボードには数人の写真が貼られては剥がされていく。

「現在、この親会社である〜〜の総裁、〜〜氏は危篤の状態でそのことによる経済の変動が予測され
るわ」

そんな説明をして、唐突に呼び出しを受けていなくなる先生。ガタッと左の壁際に座っていたミュー
ジシャン志望の青年が立ち上がり、血相を変えて教室を飛び出していく。黙々とノートを取っていた
宿禰は驚いて、顔を上げた時には青年は廊下の先に見えなくなっていた。
青年は、周囲には隠していたが実はその総裁の息子で、家を出てミュージシャン修行をしていたのだ
った。

「どうしよう。危ないから教室からは出ない方がいいのに…」

「けど、することは一つだよな」

通路を挟んで斜め後ろに座っていた吉野さんが立ち上がる。

「ですよね」

男子大学生も一番後ろの席から立ち上がった。宿禰も女の子と顔を見合わせて席を立つ。
全員で青年を追いかける。
会社の会議室のような内装なのに白いベッドが異様な部屋の前で青年を見つける。
部屋の前には取材陣が押しかけてきており、中から秘書のような女性と男性が取材陣を閉め出すよう
に悪戦苦闘していた。青年もなんとか中に入ろうとしているがはじき出されてしまう。

「しゃぁねぇだろ。一旦戻るぜ」

一番年上の吉野さんはリーダーのような存在で、みんなはそれに従った。その時、宿禰の脳に走り抜
ける映像があった。

「(な、んだ…っ!?)」

気丈そうな女性が強い口調で何かを言っている。生真面目そうな男性も何かを話している。部屋の奥
に見える白い患者服を着た初老の男性。傍に佇む物静かな面持ちの初老の女性と、髪の長い女性。
自分の仲間の男性に似た面影の、しかし髪の色や長さの違う青年。SPらしき黒服の男性。
それらはきっと、さっきの部屋にいた人たちだ。しかしなぜその絵が?

「(私はあの部屋にいた全員の顔を見てはいない…!!)」

秘書風の男女の姿は見た。ベッドに起きあがっていた老人も見えた。しかしそれ以外の人物は、女性
二人の後ろ姿は見たが顔までははっきりと見ていない。他二人の男性に関しては、頭の中の映像では
入り口のある壁を背に立っているように見えた。そんな風に見えるにはあの部屋の中に入らなくては
駄目だ。
なぜあの部屋にいた人物の顔がわかる…!?宿禰の頭は混乱した。
教室に戻り、各々は席に着く。宿禰も席に着こうとした時、机に広げたままだったノートが目に入っ
た。そしてハッと顔を上げ、ホワイトボードを見た。
あの部屋にいたのは全員、さっき写真を上げられた人物だ。

「どうした?」

吉野さんの声。目の奥に飛び込んでくる映像。
二つに分かれる道。左は細い下り道。右はカーブの坂道。地元の小学校から自宅に帰る通学路の一カ
所だ。左の道は木々が多い茂っていて、下った先はまた上り坂になっている。その下りきった場所に
誰かが倒れている。その傍にもう一人別の誰かが立っている。倒れているのは仲間に似た別の男性。
地面には大量の血。傍に立っているのは…。
その人物がにやりと笑って振り向きかけた時、宿禰は現実に引き戻された。

「っっ…!!」

ガタガタッと机を鳴らしながら宿禰はその場にうずくまる。

「おいっ?どうした!?」

今度は高速のスライドショーのようにいろんな人の血まみれの姿が目の裏に映っては消えていく。そ
れらは全部で7人。それらはすべて誰かが見下ろしている風景。

「宿禰!?」

「ち、がう…っ!!」

「なに?」

「違う!!私たちじゃない!!来週死ぬのは俺たちじゃない!!」

『!!?』

「私たちは死ぬことを予知した時点で、その未来が書き換えられていたんだ。現時点で死ぬのは別の
 7人だ!!」

どうやら宿禰のそういったビジョンはかなり信用があるらしく、みんなは宿禰が今見た映像を聞き、
対策を変え始めた。
単純な作戦だが、宿禰が見た人物を張り込みつつ護衛するという方法がとられた。
ビジョンに映ったのはさっきの部屋にいた人間も含まれていたがそれ以外の人物もいた。
現段階で所在が明らかになっており実際に護衛ができるのは3人で、7人は何組かに分かれて行動す
ることになった。
最も強力な超能力、魔法と言ってもいいかもしれない力を扱える宿禰は単独で、始めに見たビジョン
の近くにある小学校で待機することになった。
門の所で何気なく立っていると、黄色い帽子をかぶった少女が学校を出て走っていった。

「(あ、あの子‥‥)」

なんとなく目で追ってから頭の奥で何かが繋がる感覚。ビジョンに現れた少女だ。
門の前を駆けだした時、少女の姿は既になく、宿禰は自分の自転車に乗って後を追った。飛翔の魔法
も使えたが、極力使うことを控えていた。
例の分かれ道まで来て、完璧に見失ったことを悟る。やはり探索の魔法を使い、飛翔して探すべきだ
ろうか。
思案していると、横を通りすがった車の助手席に少女の姿があった。

「!?」

宿禰は慌てて後を追う。仲間に連絡を入れ、少女を発見したことを報告する。
坂道の先の大通りに面したT字路で追いつき、助手席の窓を叩く。

「はい?」

運転席に乗っていた女性が窓を開けた。

「(あ、もしかして、単にお母さんだったのかな…。どうしよう)」

まさかいきなり「娘さんが危ないので保護させてください」なんて言えるわけがない。

「えっと、」

「どうしました?」

「いえ、あの…。あっ、すいません、これ、さっき門の所でその子が落としたのを届けようと追いか
 けてきたんです」

咄嗟に自分のハンカチを取り出す。

「あら、そうでしたか。すいませんありがとうございました」

女性はにこやかに笑ってハンカチを受け取り、少女に渡した。
その時、違和感を感じる。
もう一度礼を言って発進しようとする車に追いすがり、尋ねた。

「すいません!」

窓から手を伸ばし、少女の名札を自分の方に向ける。

「この子の名前、これなんて読むんですか?ちょっと気になっちゃって」

「え…?」

女性の表情が固まった。思考が目まぐるしく働いているのがわかる。
宿禰はドアの内側からロックを外し、少女を車から無理矢理降ろした。
母親なら、宿禰の差し出したハンカチが自分の娘の物でないことがわかる筈。
万が一、偶然にも宿禰と同じハンカチを少女も持っていたとして、

なぜ母親が自分の子どもの名前を答えられない!!

答えは一つ!!

「〜〜ちゃん、あの女の人は誰!?」

自分の腕に少女を抱えながら問う。

「お母さんのお友達だって。〜〜を迎えに来たんだって」

血相を変えた女性が車から降りてくる。

「知ってる人!?」

宿禰の問いに少女は首を横に振った。

「知らない人」

やっぱり…っ!!

宿禰は少女を背後に庇って立つ。女は短いナイフを振りかざして宿禰に襲いかかってきた。
左手でそのナイフの刃を掴む。血が滲んだが、同時に突きだした右手から衝撃波を放った。
ウッと呻いてたたらを踏む女。ナイフを落とすことに失敗した。マズイ。
ナイフが宿禰の脇腹を掠めた。

「ちぃっ!!」

舌打ちと同時に繰り出した蹴りでナイフははじき飛ばせた。女は小さく舌打ちし、車に乗って逃走し
た。
地面に膝をつく。そこへ仲間の車が駆けつけた。

「大丈夫!?」

「この子、狙われてる子…。保護してください…」

「わかった。宿禰の傷は?」

「それより、吉野さんは…?吉野さんの所には、誰が…?」

「まだ誰も。これから向かうところだったの」

嫌な予感がする。あの人は魔法も超能力も使えない。

「宿禰の怪我の手当したらすぐに…」

「今すぐ行って!!私は自分でなんとかできる!!私よりも吉野さんを…!!」

「わ、わかった…!!」

少女を乗せ、走っていく車を見つめて自嘲の笑みを浮かべた。

「自分で怪我、治せないのに…。なぁにが大丈夫なんだか」

宿禰には、自分に治癒魔法を施せないという制約がかかっていた。

「でも今は、私よりもあの人が危ないの」

宿禰は灰色の空を見上げる。

「どうか、無事で…!!」



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あやふやだった所は補正かけました。
宿禰に多重人格疑惑(苦笑)
感覚というか視点が宿禰視点だったので宿禰=管理人みたいになってますが、ぶっちゃけ宿禰という
のは私のオリキャラの名前なんで、別に私自身は多重人格とかじゃないです。たぶん(え
オリキャラの宿禰はアレハレみたいな?多重人格者なんで、文中で一人称が違うのもわざとです。そ
こは本当に夢で言ってたとこですから。“夢”で“本当”って変な感じ(笑)
ただ、自分がなんて呼ばれてたのかよく覚えてないですから、もしかしたら主人格は宿禰じゃなかっ
たかも…?別にたいした違いじゃないですがね。

これからもなんかおもしろい夢見たら、こんな箇条書きですが書いていこうかなと思ってます。
皆様にとってちょうどいい小ネタになったらいいんですけど…。

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