クリステ・エレイソン 「何!?敵襲!?」 「違うと思います!後部の展望室からです!!」 「ラッセ!一緒に来て!フェルトは刹那とティエリアに連絡。展望室に向かわせて。クリスは船内 ・船外の敵影探索をお願い!」 「「了解」」 スメラギがラッセを連れて展望室に向かうと、近づくにつれて鉄臭いにおいが鼻についた。 「スメラギさん、あれって…!」 「――…血!?」 十分に警戒しながら展望室に踏み込む。そこに広がっていた光景にスメラギとラッセ、後から到着 した刹那とティエリアは暫し絶句した。 まず目につくのは鮮やかな紅。 そしてその鮮血のなか、床に座り込んだロックオンと、ロックオンを抱きしめるように倒れたアレ ルヤ。 「ア‥‥ル…、ア‥‥‥ヤ…ッ」 アレルヤ、と呼びたいのだろう。けれどロックオンの紡ぐ言葉は言葉になっていない。 「ロックオン」 いち早く冷静さを取り戻したのはティエリアだった。部屋に踏み込んでロックオンの隣に膝をつ く。 「何があった。アレルヤは…――っ!!」 ティエリアはロックオンの手元を見て再び言葉を失う。スメラギが後ろから覗き込んだそこには黒 光りする銃が握られていた。 「ロックオン…!?」 「‥‥れの、かたき…。ア‥‥ヤが、俺の、かぞ…く…殺した…っ」 「「「!?」」」 「アレルヤがロックオンの‥‥仇…!?」 刹那が呟く。ティエリアは小さく「馬鹿な!」と吐き捨て、スメラギとラッセもまたその場に立ち 尽くした。 ロックオンは涙を流しながら叫ぶ。 「アレルヤが俺から家族を奪ったんだ!!だから俺がコイツの命を奪う!!俺が殺した‥‥俺がアレル ヤを殺したんだよ!!俺はっ、自分で‥‥っ」 ――今度は自分で…大切な人の命を‥‥!! その時、ロックオンの涙を拭う指があった。 「――…ロ、…オン‥‥」 消え入りそうな微かな声。その声はもう一度、ロックオン、と呼んだ。 「――…ごめ…、ね‥‥」 「アレルヤ!?」 スメラギがロックオンにもたれていたアレルヤの身体を仰向けに寝かせる。ゴフッ、とアレルヤは 口から大量の血を吐いた。右胸からはどくどくとまだ血が溢れ出している。 「――アレ、ル…ヤ‥‥?」 「ごめ、ね…。辛い思い…させて‥‥」 「喋っちゃ駄目!!ラッセ!ティエリア!運ぶの手伝って!!刹那はみんなに連絡!!アレルヤしっかり して!!」 スメラギがアレルヤに向かって呼びかける姿を見つめながら、ロックオンは震えていた。 「アレルヤ‥‥」 消えかかる灰色の瞳の焦点。 スメラギとティエリアの手伝いでラッセがアレルヤを抱き上げ、慌ただしく医務室に向かう。 「アレルヤぁっ!!」 閉じかけていたアレルヤの瞼が開き、かろうじてロックオンを見た。 震える身体は立ち上がれない。ロックオンは這いつくばった体勢のまま祈るように叫んだ。 「お願いだ!!死なないで…死なないで…っ!!」 ――もう、逝かないで…っ 灰色の瞳は最後に頷いたようだった。 ひと滴の涙の粒を残して、アレルヤは医務室に運び込まれた。 キリエ・エレイソン クリステ・エレイソン メディア・ウイタ・モルテ・サムスケム・クリムス・アディトレム・ニキ・テ・ドミネ キリエ・エレイソン 「――…エィメン」 何度も抱きしめてくれた手を祈りながら握りしめる。 閉じられた瞼がもう一度開くことを祈りながら。 「アレルヤ…アレルヤ‥‥。好きだよ…愛してるよ…。頼むから…お願いだよ…目を開けてくれ‥‥」 もう一度、俺を呼んで… ――…抱きしめて 「アレルヤ‥‥ぁ…っ!!」 主よ、憐れみたまえ 御子よ、哀れみたまえ 我ら、生きながらに死の中にある身にして、誰にか救いを請わん されば、憐れみたまえ 「――…だっ、け…?」 掠れた声で、彼は言った。 人口呼吸器を付けたまま、彼はいつもと変わらぬ、眉尻を下げた困ったような泣きそうな表情で微 笑む。 「死ねなくて、ごめんね」 「アレルヤ‥‥っ」 ぼたぼたと、さっきまでとは違う涙がシーツにこぼれ落ちた。その涙を伝う頬を愛しそうに撫でら れる。 「アレルヤ…アレルヤ‥‥っ!!」 「僕、このまま此処にいていいかな…?」 「居ろ!!ずっと傍に居ろ!!」 俺がそう叫ぶと、アレルヤはすごく嬉しそうに笑った。 「ありがとう、ロックオン」 片方の手で人口呼吸器を取ったアレルヤは、少しだけ体を起こして俺の唇にキスをした。 我ら、生きながらに死の中にある身にして、誰にか救いを請わん 救いを‥‥ ただ一人、愛する人と共にいられる幸せを‥‥ 主よ、憐れみたまえ -------------------------------------------------------------------------------------------- 聖書も何も調べてませんので作中の一節は大目に見てくださいm(__)m とりあえずこんなことにもならなかったけど、ハブラレルヤはひどすぎるや(;_;) 2008/02/14 |