ひとみのいろ 「あ、俺これがいい」 ロックオンが選んだのはラインストーンや宝石、文字の刻まれたプレートやオブジェなんかが付いた ものでなく、ただチェーンに金具が通されただけのシンプルなネックレス。彼は男性なのだから別に わざわざ色鮮やかな装飾が施されたものを選ぶこともないし、端正な容姿に彼の選んだそれはよく似 合っていたのだが…。 今まではせっかくお給料をもらっても大半を寄付にまわして、身の回りに必要な最低限の物や本やC Dばかり買っていた僕は、初めてアクセサリーという物を買うことにした。 大好きな人に―――ロックオンにプレゼントする為に。 けれど、どんなデザインの物が似合うのか。一人で悩んでいたらプレゼントする本人に見つかってし まい、 「迷惑じゃなけりゃ一緒に探してやるよ。自分用?プレゼント?」 誤解されるのが嫌で「貴方にプレゼントしたいんです」と正直に答えた。 途端に朱に染まっていく頬。 「駄目ですか?」 口に手を当て、目を逸らしながら 「駄目…じゃないけど‥‥」 ロックオンは耳まで真っ赤にして最終的に横目で僕を見た。 「お前…直球すぎ。ハズい」 「すいません」 「ん、でも、アレだ…」 ――めちゃくちゃ嬉しい… 震えた声で、本当に恥ずかしそうにロックオンは言った。僕はなんだかそれだけで惚けてしまって、 無意識にロックオンの頬にキスを落とした。 「ばっ!おまっ、こんな所で…!!」 「誰も見てませんよ。さ、どんなのがいいですか?」 強引に話を逸らす。ロックオンは渋々乗ってくれて、まだ紅い顔を隠すように腰を屈めて並べられた アクセサリーに目を向けた。 「そうだなぁ…――」 そうして選んだのがシンプルなデザインのネックレス。僕は思わず、 「本当にそれでいいんですか?」 と尋ねてしまった。ロックオンは楽しそうに、嬉しそうにそのネックレスを手に取って「あぁ!」と 笑って答える。モデルさんみたいなかっこいい笑顔。 「ちょっとこっちが目立つけど、二人の色がちゃんと揃ってて。俺、これが欲しいな」 「“二人の色”?」 中央に通された金色の装飾を指して言うロックオンに僕は首を傾げる。彼はニコニコと笑いながら僕 の目を指差した。 「お前らの目の色。銀色と金色」 「!!」 言われてみればロックオンの持つネックレスの装飾は銀色と金色だ。チェーンと両脇の装飾は銀、中 央のは金。確かにそれは僕とハレルヤの瞳の色。 「駄目か…?なんか、離れても一緒にいるような感じになれるかなぁ、なんて思って…」 はにかんで笑っているロックオンに、僕は首を振った。 駄目なもんか。嬉し過ぎて頭がパニックだ。 「あ、あの…っ。それなら僕も…」 さっきから気になっていた、一つのネックレスに手を伸ばす。 「これ…。このネックレス、自分用に買ってもいいですか…?」 楕円のストーンの付いたネックレス。それはロックオンの瞳と同じ色で、見つけた時からすごく綺麗 だと思っていた。 「僕も、貴方と離れていても、貴方の傍にいたいから…」 ロックオンは少しだけ目を見開き、次いで軽く周囲を見渡すと、瞼を伏せて触れるように僕の頬に唇 を触れさせた。 「だからさ、お前…ハズいんだって‥‥。真顔で言うなよな、そういうの…」 ロックオンの細い指が僕の手の中からネックレスを取っていき、代わりに彼が持っていたネックレス を僕の手の平に置いた。 「それじゃ、これは俺に買わせてくれ。それで交換だ」 「えっ…!?―――はい!!」 店を出て、僕らは人のいない方に自然と足を向けた。 夜闇が訪れた公園に子ども達の遊ぶ姿はなく、静かな公園の、外灯の届くギリギリの所で僕らは互い にプレゼントしたネックレスを付け合った。 「似合ってます」 「お前も。初めて見た、そういうの付けてるの」 「持ってませんでしたから…」 そう言って苦笑するとロックオンは微笑んでもう一度、「似合ってる」と言った。 ロックオンの手が僕の前髪にかかる。 「いいか…――?」 小さく頷いてロックオンの腰を引き寄せた。首元に揺れるネックレスと同じ、澄んだ空を映した湖の ような色の瞳を覗き込む。ロックオンの手が僕の長い前髪を掻き上げて、金色の瞳を露にした。 ロックオンに頭を抱かれたまま、僕は彼の柔らかい唇にそっとキスをする。 静かで、この世界に僕と彼と僕しかいないような錯覚に陥る。 長い口づけの後、僕らは見つめ合い、そしてまた唇を重ねた。碧い石のネックレスは僕の宝物 か れ 碧い瞳の貴方は僕の大事な人 は い な い 僕は無音の空を眺めて、簡素な装飾のネックレスを包んだ手の平から指に絡めた。 あ な 祈るように項垂れた額にその手を当てる。 た も い な い 愛しています ぼ く は ロックオン ひ と り ――どんなに遠く離れても―― い け な か っ た ---------------------------------------------------------------------------------------------- ディアの二人を見て書きました。類似ネタたくさんありますよね(汗) やっぱりアレルヤのあれは絶対にロックオンを意識してる!! それから、ラストの部分にちょっと小細工してあります。ラブラブで終わらせたい方は気にせずにスルー してください。気になる方はラストのアレルヤ独白部分を反転してみてください。 2008/04/13 |