* with * 初めての宇宙からまた地上に戻り、「あぁ、やっぱり重力はいいな」とか「宇宙から見る地球の青も 綺麗だけど、地上から見る空の青のほうが好きだな」とか、家に帰ってきてから飽きもせず窓辺のベ ッドに腰掛けて独り言。 本当は話しかけているつもりなんだけど、反応がなかったらそれは会話にはならないからな。 「おはよう、今日も晴れてるぞ」 …って、まだ帰ってきてから二日目だけど。 「――…また泣いてるのか?」 目尻からこぼれて、枕を濡らす涙。俺はそれを指で掬う。 「消えてるんだな、お前が守りたかった命が‥‥」 宥めるように優しく頭を撫でた。閉じられた瞼は開かない。 「世界は変わる。変わっていく」 テレビをつける。音は消して。 「世界は破壊が好きだなぁ」 粉々になったモビルスーツ・ガンダムの破片。手を取り合って喜ぶ三大陣営のトップたち。 「平和になる―――わけがない」 軍を一つに統合し、国の防衛に当たる姿勢を見せる世界連合。 けれど、モビルスーツを―――武力を装備した平和は偽り。 「平和は軽く捨てるくせに、破壊はいつまでもとっておくのか。貧乏性にも程があるぜ」 つけたばかりのテレビを消す。 綺麗に整えられた指に自分の指を絡めた。 「朝だぞ、起きようぜ。また朝飯を無駄にする気か?」 涙は止まらない。傷ついた右目からも澄んだ滴は溢れている。 「――起きろよ。10年ぶりの再会なんだぜ?」 激しい胸騒ぎに宇宙へ上がった。そして見つけた。己の半身を。傷だらけの家族を。 「嫌だよ、こんな世界‥‥っ」 目覚めない。今度は共に戦う覚悟ができているというのに。 「狙い撃つ。この世界を。破壊を捨てない、この世界を‥‥!」 だから、起きて一緒に戦おう。 俺と同じ色の瞳がうっすらと開き、俺を見上げた。 「ラ、イ‥‥…――」 俺は笑う。 「このねぼすけめ」 おはよう、ニール ------------------------------------------------------------------------------------------- 溜めまくっていた00の本編を一気に見て、号泣して、友人にメールして、気分を落ち着かせる為 に書いた話その一。 2008/03/31 |