片目の火薬細工師




人は何も支払わずに何も得ることはできない

何かを得る為には同等の対価が必要になる

それが裏の世界におけるギブ&テイクの法則だ

俺たちは確かに

それが二人の間の真実だと信じている――







都内某所の地下室。鼻唄まじりの声が響く。

「よぉっしかーんせーい♪」

右目を眼帯で覆った男は出来上がったばかりのそれを紙袋に詰め、その場を後にした。



  ◇

妻のロックオンが美味しいケーキをセルゲイさんとソーマにと作ってくれたので、アレルヤは久し
ぶりに実家を訪ねた。

そして事件は始まる。



ピンポーン

『はい』

「あ、僕〜。アレルヤ〜」

ガチャン!‥‥タドタドタ、ガチャガチャバタン!!

「アレルヤぁぁぁっ!!!!」

「うわっ、なに!?どうしたのソーマ!?そんなに血相変えて!!」

「お前は妻になんて格好をさせてるんだそもそもお前の妻は男だろうなんであんな格好で私とお前
  のいた孤児院に来て寄付金を置いて挙げ句の果てに一緒にキルト作って行くんだ!!?」

「(す、すごいたくさんいろんなこと言われた…)ちょっと、ソーマ落ち着いて。それっていつの話?」

「一週間前の土曜日だ」

「んー…人違いじゃない?」

「いくらシスター服を着ていようがあれは絶対にお前の妻だった!!」

「シ、シスター服!?(げふぅっ)」

『お前がプレゼントしようと思ってお前の部屋に置いてあったのバレたのかもな』

「ぞ、ぞんなばずはないんだけど‥‥」

「みっともないから鼻血を拭けアレルヤ」

すると今度はアレルヤのケータイが鳴る。

「はい、もしもし。パトリック?」

『おいアレルヤ!!ロックオンはいつあんな怪我したんだ!?』

「『怪我ぁっ!?』」

『そうだよ!弁当の配達してたらロックオンを見かけたんだけど、右目に眼帯付けてたぜ!?』

「そそそそんな筈ないよ!!ロックオンは今朝も元気に僕に「おはよう」って‥‥ケーキも作ってく
 れて…!!」

「そうだ。そのシスター姿のお前の妻だが、片目に眼帯をしていたな。シュールなシスターだと思
 ったんだ」

何かがおかしいと思ったアレルヤ&ハレルヤ。

「おいコーラサワー!テメェ今どこにいる!?」

『いきなり替わんなよ!!えーっと、今は配達が終わってお前の実家の近くだ』

「ちょうどいい。俺もいま家に帰ってきてたところだ。これからこっちにまわって俺をマンション
 まで送って行け」

『なんで俺が!!と、言いたいところだが、わかった!ちょっと待ってろ!』

数分後、弁当配達用の車でやって来たコーラサワー。アレルヤはソーマにケーキを渡して慌ただし
くマンションに戻った。

「パトリックは本当にそのロックオンをロックオンだと思ったんだね!?」

「あぁ!眼帯以外はそっくりだったぜ!」

マンションに着いて、二人は急いで部屋に向かう。玄関には鍵が掛かっていた。

「出掛けてんじゃねぇのか?」

「そんな筈ないよ!!遠出できるほど腰の痛みが引いていな‥‥じゃなくて、今日は何処も行かない
 って言ってたもの!」

「そっか。おぉーいロックオーン!?」

「ロックオン!ただいま!!ごめんね、開けてくれる!?」

部屋の中から「はーい、はいはーい!」と元気なロックオンの声と、「ちょっ、このままじゃ出ら
れねぇよ!!」と焦ったロックオンの声が聞こえた。

「「『????』」」

「ごめんなー!お待たせー♪」

「へっ!!?」

『ンなっ!!』

「っっ!!」

扉を開けたのは暗い緑色の制服(女子)を着たロックオン。彼は右目に眼帯をしていた。

「どした?入れよ?」

「ど、どうしたはこっちの台詞だ!そそそそんな破廉恥な格好で…

「ロックオンは何処ですか?」
『ロックオンは何処にいる』

「アレルヤ?」

「流石、ニールのお婿さん♪俺がニールじゃないってわかるんだ?」

「こ、この鼻血は不本意ですけど…っ」

「へ?え?話がわかんね。つまりこの人は誰?」

「俺の双子の弟!!」

パトリックが混乱していると、眼帯をしたロックオンの後ろから、ピンク色の薄手のセーターを着
た、同じく女子高校生の制服姿のロックオンが現れた。アレルヤが昇天しかけてふらつくのを飛び
出したロックオンが抱きとめる。

「ろろろろロックオン、そそそその格好…っっ!!」

「ライルに付き合ってたんだよ!ごめんなコーラサワー!事情はちゃんとまた今度話すからさ、今
 日は帰ってくんね?」

「わ、わかっ、わかった。あ、けど、一つだけ、いいか?」

「うん?」

「双子?」

「そ♪俺が弟のライルで、アレルヤと結婚したのが兄貴のニール」

「――…また双子が増えた」

「俺とアレルヤは別に双子じゃねぇかんな!!」

「はっ!これで五人戦隊が組める!!」

「ってォイ!!聞けよ人の話!!身体が足りてねぇよ!!」

「俺衣装作るの得意だぞー♪」

「頼むぜロックオンの弟さん!!それじゃ俺は今すぐ帰って準備を…」

「したらはっ倒すぞ馬鹿炭酸水ぃぃ!!」

エレベーターも使わず階段を駆け降りていくコーラサワー。ハレルヤはツッコミ疲れてアレルヤと
バトンタッチ。

「と、取り敢えず家ン中入ろうぜ」

「はい…」

カチャン。

「ロックオン‥‥双子の兄弟がいらっしゃったんですね…」

「あー…うん」

「ライル・ディランディだ。よろしくな、アレルヤ」

「あ、はい。こちらこそ…。で、あの、ロックオン‥‥その格好」

「これは『魔人○偵脳噛ネ○ロ』の桂○弥子ちゃんの制服。ニールに着てもらう為に頑張って作っ
 て、昨日完成したんだ♪」

「GJですライルさん!!!!」

「ありがとうっ」

「ところでライルさんの制服は別のデザインですよね?」

「ん?これは『家庭○師ヒットマンR○BORN!』のクロ○ム・髑髏ちゃんの着てる制服。ニールのよ
 りちょっとスカート短めにしてみた(笑)」

「GJ過ぎですライルさん!!!!!!」

「眼帯したままコスプレできるキャラクターって少なくて困っちゃった〜。でもそうやって誉めて
 くれると嬉しいな(にこにこ)」

「だからって俺の分のコスプレ衣装が出来るまで新しい銃弾持って来てくんないのは困る!」

「銃弾?」

その時、テーブルの上に置かれた大小様々な銃弾がアレルヤの目に入る。

「ライフル用もデリンジャー用も、その他諸々口径別に3ダースずつ。あ、俺、火薬とか弾薬とか
 細工する人なの。爆弾とか銃弾とか作るお仕事してるんだ」

「その右目‥‥」

「うっかりしてて目に火薬入っちゃってちょっと腫れちゃったんだよ。もうすぐ治るけど」

「このコスプレは?」

「俺の趣味♪似合わない?」

「似合ってます!!」

「アレルヤ、俺は…?」

「大好きです!!ていうか天国です!!!!」

『二人の職業は相手を地獄に落とすけどな』

「写真撮っていいですか!?」

「わーい撮影会だ〜♪」

「え!?俺もか!?ア、アレルヤが喜んでくれるなら‥‥」

『付き合いきれねぇ…!』

「ハレルヤも一緒に遊べたらいいのにな!俺、アレルヤだけじゃなくてハレルヤの好きな衣装も作
 るぞ?」

『っっっ!!!?////』

「あ、ハレルヤ気絶しちゃった」

「珍しいな」

「可愛い奴だな(にっこり)」









そして、ロックオンシスター事件はライルさんがコスプレイベントで手に入れたバイト代や賞金を
いろんなゲームのシスターのコスプレをして寄付しに行ったことが事件の原因でした。



ライルさんが帰った後、昨夜もいただきますしたにもかかわらず、またロックオンを美味しくいた
だいちゃったのは、言うまでもありません。

めでたしめでたし♪



(完)


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みんなアホの子ですいません!!!!!!!!!!でもこんな可愛い子たちが大好きです(泣)
ライルはアニメ・ゲームコスが昔からの趣味で、ニールは昔からそれに付き合っててアレルヤの変
態な趣味にも抵抗なく付き合えてる感じです。

後日、パトリックの持ってきた戦隊モノコスプレ案は
赤→パトリック、黄色→アレルヤ、黒→ハレルヤ、緑→ライル、水色→ニール
なんですけど、ライルが自分とニールのコスチュームをスカート付きにしたいとか言い出します。
パトリックはオッケーします(ちょ)

2008/03/28

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