Lacrimosa〜lie-epilogue エイプリルフール翌日、4月2日。 己の理性の強固さに半ば感心しながら、ハレルヤは寝不足の目を擦ってベッドに起き上がった。反 対側のベッドを見ると既にライルの姿はない。 「(朝飯でも作りに行ったか?)」 今日は店を休みにすると言っていたのでもっと寝坊をすればいいものを、と思ってしまうのは駄目 な人間の考え方だろうか。 欠伸を一つしてベッドから立ち上がる。ケータイがメール着信を報せていて、それを確認しながら ジャージを羽織って部屋を出た。 メールはアレルヤからだ。 “朝ご飯、一緒に食べてもいいかな?” テメェでなんとかしろよ、とハレルヤは携帯電話の画面を睨みつける。既にライルが朝食を作り始 めているならば今から人数を増えることを告げるのは、正直言いづらい。 ハレルヤが迷っているとキッチンからライルの声がした。 「ハレルヤぁ?起きたか?おはよう」 「――…あぁ。‥‥おはよう」 「あのさぁ、朝ご飯ニール達と一緒でいいかなぁ?たぶんニールもアレルヤも疲れて朝ご飯作れな いだろうから…」 なんという男だ。ライルがちゃんと隣の家で起きたであろう事態を理解していたらしい。さすがニ ールに兄貴というべきかなんというか…。 ハレルヤはなんとなく複雑な気分で、廊下に立ち止まり、頭を掻いた。それからライルにアレルヤ からのメールを伝えようと再び歩き出した時だった…。 ◇ 時は深夜に遡る。 互いに初めての行為とその快感に溺れ、ニールがさすがにもう無理だとアレルヤにストップをかけ るまで行為は続いた。 ニールに比べて格段に負担の少ないアレルヤが汚れたシーツや服を替え、アレルヤに手を貸しても らい風呂場に籠ったニールは苦心しながら体内に残ったアレルヤの精液を掻き出した。身体にかか ったものも洗い流そうとシャワーの蛇口を捻ったところでニールの記憶は途切れる。 アレルヤが止まないシャワーの音に異変を感じ、風呂場を覗くと、案の定疲労に耐えられなくなっ たニールがバスタブの中で眠ってしまっていた。アレルヤは思わず笑みを漏らす。 洗い途中のニールの体の泡を落としてから抱き上げ、バスタオルで包んで拭き、服を着せた。ベッ ドのある部屋はあの独特の匂いが残っていたのでリビングのソファーに寝かせ、アレルヤもシャワ ーを浴びた。 換気した部屋にニールを抱いて戻り、別々のベッドで寝ようとしたが、その時になって夢うつつで 目覚めたニールがアレルヤの手を掴んで引き寄せたので結局同じベッドで抱き合って眠りについた。 目覚めたのはニールが先だった。 寝る時以前より酷くなっていた下半身の痛みに苦痛の声を漏らす。その声にアレルヤが目を覚まし た。 「い、っってー‥‥」 「声もなんか風邪気味みたいな声だね…。朝ご飯、僕が作るよ」 「うーん…悪ぃ‥‥」 「気にしないで」 そう言って起き上がろうとしたアレルヤの体がかくん、と倒れた。 「あ、あれ…?」 ニールは仰向けになってアレルヤを見ながら苦笑する。 「お前も全力だったもんなー…」 顔を赤くしてなんとか起き上がったアレルヤはどこかぎこちなく、けれどまったく動けないニール と違って自力で行動することはできるようだ。 「次からはもう少し軽くしような」 「、は‥‥はい…」 ニールの無意識のひと言がアレルヤの中に再び熱を生む。しかしニールはそのことにまったく気づ いていない。 “次”。ニールは無意識にアレルヤとの行為を容認したということで…。 「ロックオン…」 「うん?」 アレルヤはニールの顔を覗き込みながら微笑む。 「またしましょうね」 「っっっ…!!!!‥‥‥う、ん…」 ニールは顔を逸らし、赤面して、アレルヤは満面の笑みを浮かべた。 「僕、もっとロックオンに感じてもらえるようにがんば 「頑張るな!!!!あれ以上巧くならなくていいから!!!!もたないからっ!!!!」 次こそ最中に気絶する…!!と必死になってアレルヤを止めるニールであった。 そうして、アレルヤも本調子ではないことからハレルヤへメールが行ったのだが…。 ◇ なかなか顔を見せないハレルヤを、何をしているのかと不思議に思ったらしいライルがエプロン姿 でフライ返し片手に現れた。 エプロン姿で―――ほぼ、裸エプロンの姿で。 「っっっ、ばっ、おまっ、〜〜〜っ!!なんつーカッコしてやがる!!!!」 「え?何が?普通じゃん」 近寄るライルから逃げるように―――正しくは欲情しそうになるのを防ぐために、ハレルヤはライ ルから後ずさりして廊下を戻った。 「ふざっけんな!!服着ろ!!」 「着てるぞー。タンクトップとパンツだけだけど」 ぺらっ、とエプロンの裾をめくって素足と下着を見せる。 「めくんなっ!!!!」 「朝からそんなに叫んでたら血圧上がるぞ?」 「誰のせいだ!!!!」 ハレルヤの頭の中はパニックだ。今ここであの顔をされたら理性を保てる自信がない。 ハレルヤはとことん運がない。 「俺のせいか…?俺、着替えを出す音でハレルヤを起こしたくなくて…。気を遣ったつもりだった んだけど…」 ――ごめんな? 上目づかいでハレルヤを見つめるライル。何も反応ができないハレルヤに対し、ライルは昨夜と同 じ微笑を浮かべる。 「好きなのリクエストしていいぞ。俺、大抵のはできると思うから…」 な?と身を寄せたライルに頭が爆発しそうになったハレルヤは足を縺れさせ… ドタバタドタンッ! 盛大に転倒した。 「ハレルヤ!?」 「寄んな馬鹿!!紛らわしい言い方すんじゃねぇ馬鹿!!」 ハレルヤはちゃんと気づいていた。ライルが訊いたリクエストとは朝食の卵の調理方法だと。 それにしたってライルのあの表情は反則だ。 「!!二回も馬鹿って言ったぁ!せっかく心配してやったのに!!」 ライルはハレルヤに背を向けてぷんすかとキッチンに戻っていく。 ハレルヤは携帯電話を開いてアレルヤに返信する。 “早く来てくれ” ◇ 四人揃ったテーブルでニールとアレルヤはハレルヤの皿を見て首を傾げた。 「なんでハレルヤだけ生卵なんだ?」 「僕らは玉子焼きだったりスクランブルエッグなのに」 「いいの!ハレルヤは自業自得なんだ!」 「「??」」 ハレルヤは黙々と卵かけご飯を食した。 「んふふ〜♪」 「な、なんだよライル…」 「アレルヤとできたんだ?」 「ばっ…!」 「悦かった?」 「〜〜〜っ!!!!」 「夕飯は赤飯だな!」 「(どのくらい聞こえてたんだろう…////)」 「ニールの声はほとんど全部♪」 「うわぁぁぁぁっ!!(泣)」 「昨日はかなりヤってたな」 「き、聞こえてた…!?」 「ニールのやらしい声が」 「(あ〜ぁ‥‥)」 「次はもっと抑えてやれよ」 「うん‥‥。――あれ?ハレルヤも腰痛めてるの?」 「ん?あぁ、ちょっとな…」 「まさか‥‥ライルと!?」 「殴るぞコノヤロー!!!!」 ばこっ!! 「殴りながら言わないでよ〜!!」(泣) -------------------------------------------------------------------------------------------- 無自覚魔性受けの本性が出てきたディランディ兄弟(笑) アレルヤは我慢しないでガンガン攻めモードのギア入れてきますけど、ハレルヤは意気地がないで すねー。理性が強いとも言いますが。 勘違いとすれ違いのエイプリルフールネタは以上ですべてです。 2008/04/01 |