アレハレVSハロ 《1、AIだけど家族なんだよ》 ソファーで居眠りをしているロックオン。彼に近寄る人影―――アレルヤだ。 ごくりと生唾を飲み込むアレルヤ。その横っ腹にドスンと衝撃がくる。ハロだ。まるでアレルヤを 牽制するかのようにハロは無言のままロックオンの眠るソファーの下から見上げている。 その時、俄に湧いた殺気に、敏感なロックオンは目が覚めてぱちくり。ちなみに手にはコルトパイ ソン。 「お前ら‥‥」 っくしゅん! うー…、と鼻をこするロックオンにハロとアレハレは顔を見合わせてしょうがない、と溜め息。 「ベッドで寝ましょう、ロックオン」 『こんなトコで寝たら風邪をひく』 「ん、ごめんなーアレルヤ」 アレルヤに導かれながら部屋へ行くロックオン。 そして部屋の外で、当然のように一緒に寝ようとするハロを捕まえて第2ラウンド開始。 「ロックオン、ホシイ!アレルヤ!ハロ、ノリコエロ!ノリコエロ!」 「僕、負けないよ」 『手っ取り早く壊しちまえよ』 「ハレルヤ、ハンソク!ハンソク!」 『だぁぁぁウゼェェ!!』 殴る蹴る締め上げるの死闘が繰り広げられる。 カチャ… 部屋の外が騒がしいので起きてきたロックオン。 「っ、アレルヤ!?おま、なんてことしてんだ!!ハロを離せ、よっ!!」 ハロに掴みかかっているアレルヤを見てお説教。アレルヤがなにか言おうとしてもロックオンは聞 く耳を持たない。正座させてハロを抱いて30分に及ぶお説教。 落ち込んだアレルヤはハレルヤの中に引きこもる。 廊下の壁に寄りかかってうんざりとした声でハレルヤがアレルヤに呼びかける。 「おい、アレルヤ」 『‥‥‥‥‥ぐすん』 「アーレールーヤー」 『‥‥‥‥‥ぐすぐす』 「(溜め息)」 「どうしたんだハレルヤ」 「(ロックオン…)‥‥‥お前が知ったことじゃねぇよ」 「なっ、そんな言い方ないだろ。俺だってアレルヤが心配だ」 「はンっ!」 「なんだよ!ハレルヤまで俺が怒ったの気にしてんのかよ!」 「さァな」 「だってアレはお前らがハロをいじめるから…。しかも言い訳して逃げようとしたし…」 『ご、誤解なのに…。うわーん!!』 「‥‥ったく、泣きたいのはこっちだぜ」 「何!?アレルヤ泣いてるのか!?」 「お前には関係ねぇよ!!」(逃) 「あ!!ハレルヤ‥‥」 ガチャン! 「ハレルヤ…、アレルヤ…?」 家の扉が乱暴に閉められ、ロックオンは夕焼けに薄暗い部屋に、一人で佇んだ。 《2、そこはもう一つの逃げ場所》 日が暮れて、街灯に照らされた商店街を歩くハレルヤ。 「(アレルヤ、もう泣き止めよ)」 『ぐすっ…だっで、だっで…』 「(しばらくしたらまたリベンジする。そしたら今度こそ決着つけてやる)」 『だ!駄目だよ!ハロはロックオンの相棒なんだから暴力は駄目!!』 「(先に腹に一撃食らわせてきたのはあっちだろ!!)」 『だけどぉっ!!』 「‥‥‥‥‥‥」 『‥‥‥‥‥‥』 「『なんで』」 ――ロックオンは気づいてくれないんだ‥‥。 「あっれー?お前らどうした?今日はロックオンの所に泊まるんじゃなかったのか?ははァん♪ さてはウチの弁当を買いに来たのか!」 ハッと顔を上げればいつの間にかコーラサワーの実家、弁当屋。 無意識に歩いてきてしまったらしい。 配達帰りのコーラサワーが話しかけてきた。 「違ェよ」 「今日の日替わりはなぁ、特製ソースのハムカツ&ミニハンバーグ弁当だ!!」 「違ェっつってんだろ!!ウゼェぞパトリック!!」 「じゃあ俺に無駄な気を使わせないように、その目から流れてるもん拭いてからもっかい言えよ」 コーラサワーはハレルヤの目から流れ出た涙を指で掬う。 「!!」 「どうした、ハレルヤ、アレルヤ」 「っっ、うわぁぁぁんパトリックーーっ!!!!」 「だぁぁっ!!抱きつくなアレルヤぁぁ!!」 ◆◇◆ コーラサワーの部屋。 「で?」 「バドリッグーー!!」 「わかった!!泣きたいのはわかった!!わかったから頼む、のしかかるな!!俺はお前みたいなデカ イのを身体的に支えられるほどできた男じゃない!!」 暗に精神的になら支えてやると言っている。そして自分の背が年下のアレルヤより低いことには 触れないようにしている。 「ハレルヤ、悪い、アレルヤとチェンジ」 『無理』 「なんでだよ!!」 『‥‥‥‥‥く、から』 「なんだって?」 「“泣くから”だっで」 「‥‥‥‥‥。わかった。お前ら、思う存分に泣け」 「バドリッグーーっっ!!」 『くそ‥‥っ!』 「はいはい、よしよーし」 ――コイツらに何したんだよ、ロックオン‥‥ コーラサワーはため息をつきながら天井を見上げた。 《3、言葉って不便だね》 いつの間にか夜は更けて 「なるほどなぁ…。で、腹は?平気か?」 「ん‥‥大丈夫。もう痛くない」 「腕は?」 『痕は残ったが、リストバンドで隠すから問題ねぇよ』 「取り敢えず今日は寝ろ。二人とも泣き疲れて目も痛ぇだろ」 「でも、パトリック…!」 「いいから、寝ろ!」 「う…ん‥‥。おやすみ」 「おやすみ、アレルヤ」 部屋の電気を消すコーラサワー。彼のベッドには寝息を立てるアレルヤ。 「さて、と‥‥」 コーラサワーはケータイを手に取った。 ◇ 「なぁハロー。俺ちょっと怒り過ぎたかなぁ…」 「??」 「でもさぁ、ハレルヤだけじゃなくてアレルヤまでハロに“機械だからわかんないのか!”なんて 言って…」 「‥‥‥‥」 「アレルヤもハレルヤも、ハロに機械じゃなくてペットみたいに…家族みたいに接してくれる、い い奴だと思ってたのに…」 「ロックオン」 「俺、なんか誤解してたのかなー。でもハロ、アレルヤとハレルヤに苛められたんだろ?」 「ロックオン、ハロ…ハロ…」 「でもアイツら“違う”とか…」 「ロックオン!」 「うぉっ!?なんだハロ。おどかすな!」 「ハロ、ウソツキ!ウソツキ!アレルヤ、ハレルヤ、チガウ!チガウ!」 「え‥‥?」 〜♪(ケータイが鳴る) 「えっ、あっ‥‥‥もしもし?」 『あぁ、ロックオン。俺だ、俺』 「オレオレ詐欺か?」 『ちっげぇよ!!俺だ!パトリックだ!!』 「わかってるよ。どうしたんだ?」 『話がある。直接会って話がしたい。ていうかハロと会いたい』 「ハロと‥‥?」 『あぁ。並木通りの公園で待ってる。来いよ?』 「わかった。なぁ、アレルヤとハレルヤ知らないか?出て行ったきり、ケータイの電源も切られて て連絡がつかないんだ」 『二人なら俺ン家にいる。心配すんな。じゃぁな。公園で待ってるぜ』 ブツッ 「あっ、おい!!――…切られたか」 溜め息を吐く。ロックオンはハロを抱えると、無言のまま家を出た。 《4、謝るきっかけが欲しかった》 深夜の公園。当然のことながら誰もいない。燃えるような赤い髪を風になびかせている一人の男 以外は。 「よぉロックオン」 「コーラサワー。アレルヤとハレルヤは?」 「俺の部屋で泣き疲れて寝てる」 「ハレルヤもか!?」 「あぁ」 「っ…!」 「待てよ。行くならハロを置いていけ」 「なんでだよ!」 「俺はハロに言うことがあんだよ。本当はお前が気づいて、お前が言うべきことだ」 「は?何言って…あ、ハロ!」 ピョーンとロックオンの腕から飛び降りたハロはコーラサワーの足元まで転がっていき、じっと見 上げる。 ベシッ! 「コーラサワー!!」 ハロを平手で叩くコーラサワー。 「腕出せ、ハロ」 ニョキ、と片方の手を伸ばすハロ。コーラサワーはその金属製の、コードのような腕をぎりぎりと 握り絞めた。 「痛いか」 「イタクナイ」 「何してんだよ!やめろよコーラサワー!」 「わからない奴は黙ってろ」 コーラサワーはハロの腕を離す。 「ハロ。普段は俺もお前を機械だなんて思っちゃいない。けど、忘れるな。お前が全力で飛び込め ばハレルヤが殴るよりも硬いし、お前が全力でその腕を絡みつかせたらアレルヤが抱きついてく るより苦しいんだ」 「キヲツケル、キヲツケル。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」 「俺じゃなくてアレルヤとハレルヤにちゃんと謝れよ。反省してるのはわかったから」 「どういうことだよ…。ちょっ、まさか、」 「‥‥‥‥‥」 「俺の勘違い…?ハロ、お前、俺に嘘ついたのか…?」 「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」 「アレルヤとハレルヤに苛められたって…嘘なのかよ!!」 「ハロは反省してる。そんなに怒るな」 「ハロにはもう怒ってねぇよ!俺は、俺に怒ってんだ!!」 「!待てロックオン!!」 自分を殴ろうとしたロックオンの手をコーラサワーが止める。 「馬鹿!自分を殴ってどうする気だ!」 「じゃあどうすりゃいい!?俺はアレルヤとハレルヤを誤解して、しかも一発平手かましたんだぞ!! ハレルヤまで泣いてたってことは、俺、めちゃくちゃアイツらのこと傷つけたってことじゃない かよ!!」 「落ち着けロックオン!!」 「頼むコーラサワー!俺のこと殴ってくれ!じゃなかったら手を離せ!!」 「ロックオン…!」 コーラサワーはゆっくりともう片方の手を振り上げて‥‥ ゲシッ! 横からの飛び蹴りに吹っ飛んだ。 「俺のロックオンに何してる炭酸水もどきが」 「いってぇぇぇ!!!!何すんだハレルヤ!!靴の踵、めり込んだぞ!!だいたいテメェ、寝たんじゃな かったのかよ!?」 「俺は寝てない。アレルヤが寝ただけだ。もうじき起きるだろうがな」 コーラサワーは突然現れたハレルヤを睨み返すも足蹴にされたままなのでひたすら喚いた。 ハレルヤは決してロックオンのほうを見ようとしない。 その気まずさを誤魔化すように、コーラサワーは喚く。 《5、怒ってないよ、大好きだよ。 愛してる》 「それで、おめぇはロックオンを殴ろうとしてやがったな?」 「馬鹿野郎!殴る訳ねぇだろ!!あれは殴ると見せかけてフェイントで、抱きしめてやるっていうシ ナリオが…」 「人様の恋人を勝手に抱こうとしてんじゃねェよ!」 「あだだだだ!死ぬ!やめろ!骨が折れる!!」 「ハレルヤ…」 ピタッ、とコーラサワーを踏みつけていたハレルヤの足が止まる。 「ハレルヤ…、ごめん、俺っ…!」 「‥‥‥気づいてくれたなら、いい…」 ハレルヤはコーラサワーの上から足をどけると、シッシッと手で追い払う仕草をした。 コーラサワーが不貞腐れながらハロを抱いて「コーヒーでも買ってくらぁ」と公園を出ていく。 二人きりになったロックオンとハレルヤ。 「ハレルヤ…ほっぺた、痛いか?」 「平気だ。ハロに食らった鳩尾のほうが効いた」 「先に手、出したの…お前じゃなくて、ハロ、だったんだな‥‥ごめん」 「気づいたならいいって言っただろ」 「でも、それじゃ俺の気が済まない!!」 「じゃあどうして欲しいんだ?」 「‥‥‥‥‥‥」 ロックオンはハレルヤに近づくと手を握ろうとした。 ロックオンの指先がハレルヤの手首を掠め、ハレルヤは一瞬だけ疾った痛みに手を引く。 「あっ…ごめん…。手首も、怪我したのか?」 「痣になっただけだよ」 「見せてくれ…」 「嫌だ」 「見せて」 「‥‥‥‥‥」 ハレルヤは渋々と手首のリストバンドを外す。くっきりと赤紫に痕がついた手首は少しだけ腫れて いる。 ロックオンはまるで自分の躯が痛むように表情を歪ませると、恐る恐るハレルヤの手に触れて、両 手で包むようにしながらうつ向いた額を当てた。 「ごめん‥‥っ」 「ロックオン…」 ハレルヤは空いているほうの手でロックオンの顔を上げさせる。 するりと包まれていた手を抜いて、痛みを我慢して細い腰を抱き寄せた。 「ハレル、んっ‥‥んふっ…」 「(起きな、アレルヤ。交代だ)」 「ん、ん‥‥‥んん、ア、レルヤ…?」 「ん…。わかりました?」 「わかる。ハレルヤと、少し違う…」 ――キスの仕方 「‥‥‥‥‥‥‥やっぱり…」 「ん…?」 「やっぱり…貴方にわかってもらえると、嬉しい」 「アレルヤ‥‥ごめ「謝らないで」 アレルヤの長い指がロックオンの唇を押さえる。 「もう、謝らないで」 ロックオンはアレルヤを見つめる。街灯が遠いのでわからなかったが、彼の瞼は少し腫れぼったい 感じがした。 ロックオンはアレルヤの瞼に小さくキスをする。 「ありがとう」 「ロックオン…」 翡翠色の瞳と銀色の瞳が交わり、互いの距離が再び近づく… 《6、これは何かのあてつけか!? これで終わりと思うなよ?》 ハレルヤはアレルヤに感覚を同調させ、一つの媒体から二人で口づけをしよう とした矢先 っくしょん!! 「ハクション!ハクション!」 コーラサワーのくしゃみとハロのはしゃぐ声に慌てて離れる二人。 「コーラサワー!ハロ!」 「いやぁ、ちょっと薄着だったかなぁ…」 「パトリックーー!!」 ゲシッ! 「あぃだぁっ!!」 「(せっかくいい雰囲気だったのに!!せっかくいい雰囲気だったのにぃぃぃっ!!!!!!)」 「あだっ!!いだだだ!!」 「わわわわ!待て!アレルヤ!ハレルヤ?と、とにかく落ち着け!コーラサワーの腕、変な方向に 曲がってるから!!」 「ヤッチマイナ!ヤッチマイナ!」 「けしかけるなハロ!!あぁもう!やめてくれないと一緒に寝てやらないぞ!!」 ピタッ。 「‥‥一緒に…寝る?」 「そうだよ。ハロが俺と寝てるのにやきもちやいたんだろ?だったら今日はハロじゃなくて、アレ ルヤと一緒に寝るって言ったの!」 「ホント、に…?」 「ジョウダン!ジョウダン!」 「冗談じゃない!ホントに!」 キラキラと顔を輝かせて、コーラサワーに関節技を決めていた手を離す。 「あ、“寝る”ってホントに寝るだけだぞ!!あの‥‥セッ…ス‥‥とかはナシだからな!!」 「ハロ、ユルサナイ!ユルサナイ!」 「頼むよ、ハロ。俺、二人が好きなんだ」 「「『!!!!』」」 「‥‥コンヤダケ。コンヤダケ」 「今度も許してくれよ、な。―――あれ?アレルヤもコーラサワーも顔赤くして、どうした??」 「はははは破廉恥ぃぃぃ!!!!」 「えぇ!!?」 「おおおおいアレルヤ!!お前まさかロックオンとの関係、CどころかKくらいまでいってるのか!? いや、そうだよな。週一で泊まってるくらいだもんな。Pくらいはいってて当然だよな…」 「おーいKYだなパトリックー。しかもなに放送禁止にしてんだよー」(放送禁止→P(ピー)) 「棒読み!?ていうか今のお前アレルヤか!?ハレルヤか!?」 「トツゼンコクハク!ドキドキ!ドキドキ!」 「え?もしかして俺の所為?俺が“好き”って言った所為??」 「こうなったら俺は邪魔者以外の何者でもない!!俺は帰るぞ!!」 「ありがとうパトリック!!今度菓子折り持ってくね!!」 「赤飯炊いて待ってるぜ!!」 「ちょっ、先走りし過ぎだぞ!!俺はまだ…っ!!」 「お幸せに〜っ!!」 走り去るコーラサワー。 「あああ〜〜!」 「ロックオン」 「アレルヤ!!今日は寝るだけだからな!!」 「わかってますよ」 「ハレルヤもわかってるな!?」 『あぁ』 「なら、‥‥帰るか!」 「はい!」 ◆◇◆ ロックオンの部屋。 規則正しい寝息が聞こえる。 もそりと動いたアレルヤは、腕で躯を起こして、熟睡しているロックオンを見下ろした。 「ねぇロックオン…」 『“今日は”ってことは』 「いつかは抱かせてくれるんですよねv」 チュッ‥‥ 『おやすみ、ロックオン』 「おやすみなさい、ロックオン」 ----------------------------------------------------------------------------------------------- メールのやりとりの中で生まれた話ですので箇条書き且つ台詞が多いです。 あー、このころはまだ自分、「コーラサワー」って呼んでたんだなぁ…としみじみ思いました。 2008/01/29 |